花天月地:空には花が咲き、地には月の光が朧気にさしていることをいう。
心地良いエンジンの音。
仄かに香るマルボロの香り。
沈黙の間を流れるのは、落ち着いたクラシック。
時折、ギアを替える音がするだけ。
は運転している三蔵の横顔を見つめた。
今日は珍しく夕食をフランス料理店でとった後、どこに行くかは告げられずにこうして車を走らせている。
外はもう夜の帳がおり、都会からも遠く離れてしまったので辺りに灯りはそんなにない。
見上げれば、夜空に輝く無数の宝石。
都会のネオンに慣れてしまった空とは比べものにならない美しさがそこにあった。
「綺麗。」
溜息と一緒に零れた言葉。
それに満足したのか、三蔵はアクセルを踏んだ。
「着いたぞ。」
車を降りると、そこは一面の星空が広がっていた。
「……凄い。」
それしか言葉が浮かばない。
絵にも描けない自然の美。
「行くぞ。」
惚けていると、三蔵に手をとられて連れて行かれる。
ここは一体何処なのだろうか。
夜空からの光だけでも十分見渡せるが、整えられた石畳を歩いて上っていくと数段の階段があった。
「、目を閉じろ。」
「え?」
「いいから閉じろ。開けるんじゃねえぞ。」
言われるままに目を閉じて、手を引かれるままに階段を上がる。
「開けていいぞ。」
三蔵の言葉で、はゆっくりと目を開けた。
そこは一面のバラ園。
月光を浴びたバラは神秘的で、は息をするのも忘れるくらい見入っていた。
空と地の境界線すらあやふやで、まるで天空の庭園にいるようだった。
「気に入ったか?」
三蔵の声で我に返り、隣の三蔵を見上げれば、輝く金糸の髪がまるで後光のようで。
「三蔵……神様みたい。」
でも、そうなら、月の女神ダイアナが連れて行ってしまいそうで。
「バカな事考えてんじゃねえよ。」
「だって…」
三蔵は物凄くかっこよくて、私は平凡。
考えない方がおかしいよ。
「お前だけでいい。俺が唯一愛する女はだけだ。」
心地良い低音の声が、欲しかった言葉を届けてくれる。
バラの香りと三蔵に包まれて、優しく落とされる口付けに身を任せる。
「三蔵………愛してる。」
永遠に―――。
遅くなりましたが、当サイトも二周年を無事に迎えることが出来ました。
これも、ひとえに訪れてくださる皆様のおかげです。
本当に有難うございます。
拙い夢ですが、宜しければお持ち帰りください。
その際に、一言でもかまいませんのでBBSか拍手にて報告頂ければ幸いです。
それでは、これからもどうぞ宜しくお願い致します。
蒼稜 08.05.30