―――「AI」―――
次の町までは、どんなに早くても後1日はかかる。このまま走らせても野宿であることに変わりは無い。
ならば水辺に近いところで休むに越したことは無い。
いつもの様に、悟浄と悟空は小枝を拾いに行き、三蔵は近くの木に寄り掛かり、煙草をふかしながら新聞を読んでいる。
そして、は僕と一緒に夕食の準備をしていた筈なんですが・・・。
ウンウンと難しい顔をして唸り続けるに、八戒は手を止めて声をかけた。
「えっ!?あ、ごめん。考え事してた。」
「いいですよ。の百面相も可愛いですし。」
途端、赤面して俯いてしまう。
今まで訳あって男として行動してきた。
こうやって女性として過ごすようになって、まだ免疫が出来ていないみたいで。
そんな素直なところが可愛いんですよ?
「ところで、何を考えていたんですか?」
「・・・笑わない?」
「ええ。可笑しな事でなければ。」
「あのね・・・。愛って何!?」
「はい?!」
いきなり何を聞いてくるかと思えば・・・。
そんな事は三蔵に聞いてください、と言ったところであの三蔵がこんな事には答えてくれる筈もありませんか・・・。
「愛」ですか。
ふと脳裏に浮かんだのは、忘れる事の出来ない大事な女性の顔。
僕と同じ瞳で。
僕と同じ髪の色をした。
笑顔の素敵な僕の姉。
世間的に認められなくても、あれも一つの「愛」の形。
「はっかーい!!!八戒!?」
「えっ?ああ、すいません。」
いつの間にか自分の世界に入り込んでいたんですね。と謝ると、が困った表情になった。
「ごめんね。思い出したんでしょ?でも・・・、それも八戒にとって大切な「愛」なんだと思うよ。」
「ええ・・。そうですね。」
スパーン!!!
次の瞬間、乾いた音が響き渡った。
「っ・・・。痛い!!!三蔵、何よ!!」
「るせえ。変なこと悩んでんじゃねぇよ!」
ああ、気が付いていたんですね。
新聞を読む振りをしながら、の事を伺っていたって事ですか。
「、僕の手伝いはイイですから。さっきの答え、三蔵が教えてくれるそうですよ。」
「ホント!?」
「・・・チッ。おい、八戒。」
目を輝かせているに反して、眉間にシワを増やす三蔵に「そうですよね?」
と笑顔を向ければ、それ以上言うことは無く、の腕を掴んで元居た場所に行ってしまった。
先程と同じように木に寄り掛かり、胡坐をかいた上にを座らせた。
さっきから八戒の隣で百面相をしていると思ったら、「愛」とは何だ?と口走るこいつに正直頭をかかえた。
「ねえ、三蔵。」
「チッ。一度しか言わんぞ。」
早く!と急かすの頭をくしゃっと撫でて、言葉を紡いだ。
「「愛」とは、人間という謎に満ちた独特の存在が、不思議に融けあっていく事だ。」
人間一人ひとりに個性があり、考え方がある。
愛し、愛され、一つになる事でそれらが融けあい
気持ち、思い、考え方が一つになる。
「」がいて「俺」がある。
「俺」がいて「」がある。
要は、そういう事だ。
お前は、俺の中に融けてまざりあっていればいいんだよ。
ずっと、ずっと離しやしねえ。
いつも遊びに行かせて頂いている『snow bound』の、みあ様に捧げた品物です。
桃源郷連載 三蔵 のヒロイン設定です。
男装がばれた後って事で。。。まあ。
三蔵に叩かれてますが、それも愛情の裏返しと言う事です。
ウチの三蔵は、かなり甘めかもしれません。はい。