ポタポタポタ
雨が傘に当たり、リズムを奏でる。
パシャパシャパシャ
雨で濡れた道に溜まった水溜りを急ぎ足で通り過ぎる人、人、人。
色々な種類の華が咲き、流れていく。
八戒もその中の一人だった。
――― A specific medicine of love ―――恋の特効薬
昨日から降り続いている、秋の長雨。
今日はとのデートだというのに・・・。
溜息混じりに息を吐き出しながらまだ止みそうも無い黒く澱んだ空を見上げた。
いつもの待ち合わせ場所。
それがココ、駅前の大時計前。
晴れていたら大時計の下で待つのがいつものスタイル。
でも今日は雨。
仕方ありませんね。
がまだ来ていない事を確認してから、八戒は大時計の見える駅の入り口横に立った。
雨に濡れる時計を見上げてみると、まだ約束の時刻の30分前。
傘をたたんで壁に立て掛けると、その表面を水滴が滑り落ち、乾いていた路上に小さな水溜りを作った。
それを気に留めるでもなく、急ぎ通り過ぎる人波を避けるように八戒は壁に背を預けた。
今日のデートを楽しみにしていたの顔が思い浮かぶ。
以前から観たい映画があると言っていたのに、互いの休みが重ならずに先延ばしになっていた。
ようやく重なった休みなのに、雨なんて・・・。
もがっかりするでしょうね。
晴れていたらウインドショッピングでも、気兼ねなくできるというのに。
そんな事を考えながらも、忙しなく通り過ぎる人波の中に恋人の姿を探した。
今日は珍しく待ち合わせ時間ちょうどにやって来た。
いつもなら十分前には来るんですけど。
この雨のせいでしょうね。
雨の中駆けてきたせいで少し濡れてしまった上着をハンカチで拭きながら、笑顔を見せた恋人の姿に八戒は口元を緩めた。
「遅くなってごめん。」
「遅くなんてないですよ。時間通りです。」
「行きましょうか」と手を差し出すが、肩で息をしているがその手をとる事はなかった。
上気した頬が少し赤い。
それに少しばかり引っ掛かりを覚えながらも、八戒はたたんでいた傘を開きの隣に並んだ。
二つ並んだ華が、波の中に混ざりあい流れていく。
辿り着いた映画館。
以前からが観たいと言っていたスパイアクションモノの映画。
それが今日、最終上映日だった。
チケットを買い、中に入ると、意外にも人が多い事に驚きを感じた。
雨だからでしょうかと思いながらも、売店で嬉しそうにパンフレットを購入しているに視線を向けた。
「・・・おかしいですね。」
先程外で見た時と今とで、の顔色が変わっていない。
いくら走って来たといっても、それから時間は経っている。
なのに、まだ顔は火照ったように赤いまま。
よくよく注意してみれば、息も少し荒いようですし。
まさか・・・。
一つの考えに辿り着いてしまえば、後は見ていても分かってしまう。
それが間違いなく事実だという事が。
久しぶりのデートで、しかも楽しみにしていた映画。
の性格上、無理をして来たというのがありありと分かってしまう。
八戒にしてみれば、そんなも可愛くて愛しくて許してしまいそうになる。
微熱程度なら、このまま映画を観てもいいんですけど、どう見てもそんな顔色ではないんですよね。
怒るでしょうけど、仕方ありません。
僕にとっては映画よりもが大切ですから。
一度深く深呼吸してから、パンフレットを見ているのもとへ歩み寄った。
八戒が隣に来た事で、は視線を上げた。
「八戒、中に入りましょ。」
ふわっとした笑顔も、熱のせいでいつもと違う。
お願いですから、これ以上無理はしないで下さい。
そっとの肩に手をまわし、優しく出口へとエスコートする。
何が起こっているのか解ったの足が止まった。
「八戒?ねぇ、どうしたの。」
「帰りましょう。」
「・・・どうして?」
「僕にとっては映画よりも、貴女が一番大切なんですよ。もう分かりますよね。」
翡翠の瞳を細めながら優しく諭すと、は素直に頷いた。
ほっと胸を撫で下ろしながら、また肩を抱き寄せて映画館を後にした。
連れ帰ったのは八戒のマンション。
一人暮らしのわりに、きちんと片付いているリビング。
そこのソファーに一先ずを座らせた。
救急箱から体温計を取出し、少しぐったりしているに手渡す。
「無理をするからですよ。熱計って下さい。」
「ごめんなさい。でも、八戒とのデート楽しみにしてたから・・・。」
「だからといって、熱があるのに無理をしていいんですか?」
そう言うと、は口を噤みながらも体温計を脇に挟んだ。
苦笑しながらも様子を伺う。
暫くすると体温計が、ピピッと機械音を鳴らした。
何も言わずに手を差し出す。
しぶしぶながらもが体温計の表示を見ること無く、八戒の手にそれを乗せた。
伝わってくる熱がまだ熱い。
それもそのはず。
液晶表示部に表れていた数字は38.8度だった。
さすがの八戒も息を呑み、の顔を覗き込む。
「・・・何度だったの?」
「言う前に答えて下さい。家を出る前はどうだったんですか。」
「分かるとしんどくなるから計らなかった。」
目を合わせること無く、小さく消え入りそうな声で呟いた。
「何というか・・・らしいですね。それでも、今は38.8度あるんですから寝てましょうね。」
をお姫様抱っこで抱き上げる。
突然の事で小さな悲鳴を上げ、赤い顔をより一層赤くして八戒の胸に顔を埋めた。
熱があると分かっていながらも、その仕草に自然と口元が綻んだ。
何気ない仕草の一つ一つがとても愛おしい。
抱きかかえて八戒の部屋に入り、ベットにそっと下ろした。
「服、着替えた方がいいでしょう?」
返事を聞くのも待たずに、クロゼットの中からシャツを取り出した。
それをベットの上に置いて、が今着ている服のボタンに手を掛けた。
「自分で出来るよ。」
「ダメですよ。病人は大人しくしていて下さい。」
人差し指をの唇にそっと当てた途端、恥ずかしそうに俯いてしまう。
熱のせいで少し火照っている身体。
いつもより荒い息遣い。
潤んだ瞳。
誰よりも、何よりも大切な恋人のそんな姿に、八戒の理性が崩れ落ちそうになる。
それを誤魔化しながらも、一つ一つボタンを外していく。
が、服の下から現れた白く滑らかな肌に、紅い華を咲かせたくなった。
の背に手を回し、ゆっくりとベットに押し倒す。
「八戒?」
「風邪は人にうつす方が早く治るっていいますよね。後、汗を掻いた方がいいんですよ。」
くすっと悪戯に笑みを落とし、戸惑っているの唇にそっと口付けをした。
触れるだけの軽いキス。
何度も啄ばむように、角度を変えながら口付けていると、の口から小さな喘ぎ声が漏れた。
重ねていた唇を離し、そのまま首筋に押し当てる。
「あっ・・・。」
の喘ぎ声を聞きながら、一つ一つ白い肌に咲かせていく紅い華。
首筋からゆっくりと下に咲かせていきながら、背後に回した片手でブラジャーのホックを難なく外す。
露わになった双丘を揉み上げると、一際大きな声が上がった。
「いつも以上に敏感ですね。」
「や・・・ぁ。そんな・・・こ・・・・・と・・・・・。」
「我慢しないで、感じて下さい。」
「あ・・・・・ん。」
感じ喘ぐ声とは反対に、恥ずかしいのか八戒の胸に手を当てて抵抗している。
それに屈すること無く、を跨ぎ八戒もベットの上に上がった。
羽織っているだけの上の服とブラジャーを脱がしてから、八戒自身も上の服を無造作に脱ぎ捨てた。
片手では収まりきらない豊かな膨らみを揉みながら、その先端の蕾を口に含む。
柔らかかった蕾は瞬時に固さを増し、それと同時にの身体もビクッと跳ね上がった。
「ゃ・・・・、ダメ・・・。」
「可愛いですよ、。」
リップノイズを響かせて胸の蕾から唇を離し、再びの口に重ねた。
先程の触れるだけの口付けとは違い、口内を舌で舐めまわし、逃げ惑う舌を絡め取った。
そうしながらも、片手をスカートの中に滑り込ませる。
滑らかな太腿を滑っていきながら、ショーツ越しの秘部に達する。
「・・・ふぁ・・・・ん・・・・・・ぁっ・・・・。」
微かに開いた唇から、熱い吐息が漏れる。
ショーツ越しでもはっきりと分かるくらい濡れている秘部に、自然と八戒は口元を緩めた。
「僕を感じて下さい。愛していますよ。」
「は・・っ・・・かい。」
窓の外から聞こえてくる雨音と、室内の二人の吐息が混ざり合う。
冷えていた部屋も、今では二人の熱で暖まり、窓を曇りガラスに変えていた。
ベットの中、寄り添い眠るの頬にそっと口付けを落とし、八戒も瞼を閉じた。
幸せそうな寝顔に安心しながら、明日になれば熱が下がって元気な笑顔を見せてくれる事を願って。
を苦しめる物が何であれ、僕が全て取り除きますよ。
それが無理なら、せめて一緒に乗り越えて進んで行きましょう。
いつまでも貴女と共に・・・。
愛していますよ、。
お待たせ致しました、ユカリ様。
八戒さんで、ヒロインを看病する激甘で裏に近い夢・・・と言う事で、リク頂きました。
・・・書き終わって思ったのですが、すいません。(平謝り)
何故でしょう・・・看病の「か」の字すら無い。(滝汗)
ドキッ!!
愛は詰め込んだつもりです。
お待たせしてしまった上に、このような駄文で申し訳ありません。
少しでも楽しんで・・・基、八戒さんの愛を感じて下されば幸いです。
後書き