いつもそうなんだ。

突然で、強引で

でもそれが焔なんだと実感する。

不思議と怒る気はおきない。

怒るどころか、逆にこちらが泣き出してしまいそうな。。。

広い心の持ち主。

だから、甘えちゃうのよ?

言ったところで、かまわないと微笑み返され

自分が弱くなってしまう。

飾らない心で接することができる唯一の異性。

私にとって、かけがえのない存在。





―――層心理 ―――





疲れた身体を引きずりながら帰宅した
そんなの目に映ったのは、自分の住むハイツの前に止まっている一台の車。
深蒼のスカイラインGT。
そして、それに凭れる様に佇んでいる一人の男。

まさかそんなハズない。

そう思っても、やはり見間違いでもなくその男は焔だった。
こちらに気付いたのか、少し長めの前髪をかき上げながら凭れていた身体を車から離した。


いつも思う。

どうして彼は知っているのだろう。

私の心が弱っている時を。

どうして彼は知っているのだろう。

私の心が泣き出しそうな時を。


踏み出した足をその場で止め、焔を見つめた。
一歩。
また一歩。
焔が近づいてくる。
二人の距離がゆっくりと縮まる。
そして、遂に無くなった。
何も言わず、何も言わせず、ただ黙ってその胸に抱きしめてくれる。
身体も心も抱きしめられた、そんな感覚には無意識に涙が頬を伝った。


「おかえり。」


頭上から降ってくる、優しくて甘い声。
何もかもを優しく包み込んでくれるのは焔しかいない。
焔の声が心までしみ込んでくる。
深層心理に刻み込まれているのは、すべて焔の優しさ。
私を深い闇から救い出してくれる、唯一の人。


「お前は俺が守りぬく。だからもう俺の傍を離れるな。」


強く、言霊の宿った言葉。

逆らえない。

逆らうつもりもない。


ずっと開いていた距離がなくなった。
見上げる蒼の瞳に、柔らかいオッドアイが映った。


いつもそうなんだ。

突然で、強引で

でもそれが焔なんだと実感する。


ふわりと落とされる口付けも、強く抱き締めてくれるその腕も・・・。
私の凍った心を溶かしていく。
深層心理、刻み込まれているのは、きっとお互いしか愛せないという事実。