ふわふわとした感覚がとても心地いい。

夢を見ているのか、はたまた現実なのか。

それすらも解らない程、今のは疲れきっていた。










連日に及ぶ残業。

それも早朝から深夜にかけて。

ひどい時などは会社に泊まり込む事すらあった。

そんな状況がようやく今日終わった。

ふらふらの身体を引き摺って帰ってきたのは何時ごろだったか・・・。

夢と現実の狭間で溺れる。










無意識に枕元に置いてある携帯を手にし、操作する。

聞き慣れた呼び出し音。

数コール目で不機嫌な声が聞こえてきた。

今一番聞きたい声。

今一番会いたい人。





「・・・一体何時だと思ってやがる。」

「三蔵、会いたい。」





ただ一言。

今一番の願い。

夢でいいからと、現実と寸分違わぬ声を聞いた。

なら、夢でいいから会いたい。



ふわふわとした感覚に溺れる。

そこでは意識を手放した。















深夜にかかってきて、一方的に切れた携帯を三蔵はまじまじと見つめた。


「・・・バカが。」


呆れたように呟くが、目元が緩んでいる。

無意識に電話してきたのが無条件に嬉しい。

出来るだけ急いで服を着替え、のマンションへと車を飛ばした。

合鍵で部屋に入り、奥へ進んでいく。

寝室のドアを音をたてずに開けると、やはりベッドに突っ伏して眠っている恋人の姿があった。

手には携帯電話を握りしめている。

それがやはり無意識にかけてきた事を物語っていた。



「無理ばかりしやがる。」


頼れよ、俺を。



着ていた服を脱ぎ捨てての横に滑り込み、ぐったりした身体を己の胸の中に抱き寄せる。

そんな事をしても起きる気配すらないに苦笑する。

どれだけ無理をすれば気が済むんだ。

ったく、心配する方の身になりやがれ。

それが嫌ではなく、逆に心地いい。

そう、こうやって無意識に求めてくれるから。

無条件に愛しくなる。

安心して眠れ。






後書き