まだ暗い部屋の明かりを点け、その部屋の住人と恋人が戻ってきた。
明日はお互いに重なった休みの日。
そして運良く、今日は何年かに一度の流星群の見れる日だった。
だから郊外まで足を運び、流れ行く星たちの輝きを見てきた。
少し眠たい身体をソファーに沈めたは、リビングに立つ紫鴛の後姿を見つめた。
「何か入れましょう。」
「私が入れるよ?」
「かまいませんよ。ちょうど先日、取引先の方からいいハーブを頂いたんです。は座っていて下さい。」
そう言いながら、お茶の用意がされていく。
冷静沈着で何があっても本心を見せない紫鴛。
でも、本当はとても優しい人だって知ってる。
今日もこうやって私の我侭に付き合ってくれたんだから。
ぼんやりとそんな事を考えていると、ガラス製のテーブルと食器が触れ合う微かな音がした。
何処かに行っていた意識を現実に戻すと、ちょうど紫鴛がハーブティーを置いているところだった。
その色に魅せられた。
「ブルーのハーブティーなんて綺麗ね。」
「ええ。夜明けのティーザーヌというそうですよ。」
「ホント、夜明けの空の色に似てるわね。」
紫鴛の説明に感心しながら、はティーカップを覗き込んだ。
その仕草に紫鴛がフッと軽く笑みを漏らす。
「時間が経つとピンク色になるそうです。それに、レモンを入れると濃いピンク色になりますしね。」
「すごいね!サプライズティーなんだ。」
「貴女みたいですね。」
「何故?」
「そうやってコロコロと表情を変えるところがですよ。」
「え〜〜っ。」
「可愛いと言っているのですよ?」
サラリと恥ずかしい事を、それも表情を変えること無く言ってくれる紫鴛。
は紅くなった顔を隠すように下を向いた。
その隣に、静かに腰を下ろす紫鴛。
紫鴛は星に願いをかけたのかしら?
私は叶えたい。
大切な想いを、気持ちを、いつまでも持ち続けて。
貴方と同じ時を過ごしていきたい。
貴方の隣で、ずっと。
貴女は流れ行く星達に何を願ったのでしょうか?
私は、許されるならこの時間を――――。
貴女と過ごせるこの時間を永遠に――――。
夜が明けていく。
二つのカップに注がれたマロウティーも、ほんのりとピンクに変わっていく。
休日の甘い時間はこれから。
二人で過ごす時間も甘く色を変えていく。
ゆっくりと重なる二人のシルエットが、明け行く空の光りを受けて、床に影を落とした。
ねえ……、紫鴛。
大好きよ。
後書き