隣で寝ていた是音がベットから抜け出す気配で、は目が覚めた。

閉じていた蒼の瞳をゆっくりと明け、そこに恋人の是音の姿を探す。



「ぜー君?」

、悪ィな。起こしちまったか?」

「大丈夫。・・・・・・何時?」

「五時半だ。まだ、寝てろ。」



そう言って落とされる優しい口付けに、はされるまま、感じるままに意識を手放していた。










鼻をくすぐるかぎなれたタバコの香りに、今度こそは目を覚ました。

勢いよく起き上がり、枕元の目覚まし時計を見る。

「!!!ぜー君!何で起こしてくれなかったの〜〜〜。」

情けない声を上げるの頭を、クシャッと是音の大きな手が撫ぜる。

時刻は七時。

是音が仕事に出かける時間だった。

泊まりに来るたびに、朝ごはん作るから!と目覚ましをセットして寝る

泊まりに来るたびに、離れていた距離を、時間を埋めるように求めてしまう是音。

結局、今まで一度たりともが朝食を作った事は無かった。



「昨日も無理させちまったからな。正直、まだ辛いだろ?」

「・・・それは。・・・・・・でも!」



ムキになって言い返してくるに苦笑し、クローゼットの中からシャツを一枚取り出した。

情事の後、そのまま意識を手放したは一糸纏わぬ姿だ。

細い肩にそれを羽織らせてやると、表情がフッと和らいだ。

にとっては長い袖元。

自分で折り返すわけでもなく、スッと俺の前へ両腕を差し出してきた。



「まったく・・・・・・、姫さんは。」



苦笑しながらも、袖を折り返してやり触れるだけの口付けを交わした。



「無理しなくていいからな。ゆっくりしてろ。」

「ん。・・・ぜー君・・・・・・。」



突然鳴り出したケータイに、は口を噤んだ。

是音は眉を寄せながらも画面を確認し、通話ボタンを押した。



「なんだ?今出るとこだ。」
「おはようございます。まだ出ていないのですね。」
「ああ?」
「今日は、さんのお休みの日ではありませんか。」
「・・・なんで知ってんだ?」
「と言うことで、是音。貴方、今日は出社しなくていいですから。では、良い休日を。」
「・・・・・・・・・・おいっ!!!おい、紫鴛!」



切れてしまったケータイに叫んでも、返事は返ってくるはずもなく。

溜息を吐きながら、ケータイを閉じサイドテーブルの上に置いた。

そんな様子を心配そうに見ている



「どうかしたの?」

「ん。ああ、なんでもねぇよ。」

「本当に?」

「ああ。それより、。今日は一日一緒に居れるぜ。」

「・・・・・・ウソ。」

「マジ。お節介焼きの紫鴛が休めってよ。」



そう言った後のの表情は、一瞬にして輝きを増した。

紫鴛に借りを作るのもなんだが、まあの喜ぶ顔が見れたからチャラにしてやるよ。

タバコを銜えて、の隣に腰を下ろす。



「で、姫さんは何がしたい?」

「朝ごはん作りたい!食べてくれるでしょ?」

「ああ。念願の朝食だな。楽しみにしてるぜ。」

「うん!」







やっと重なった休日だ。

姫さんの望みを、全て叶えてやるよ。






突然の電話には驚いたけど、紫鴛さんには感謝しなくちゃ。

今日は、いっぱい一緒にいようね。






ねえ・・・・・・、是音。

大好きよ。











後書きというわけでもないのですが。。。
少し補足を。
紫鴛とのケータイでの会話の所、反転すると紫鴛の言葉が解りますよ。