――― 夢の中なら ―――





最近、思う事があるの。

だってね、兄さまや昌浩は大きいから。
私が歩くより、早く歩けるし。
私が走るより、早く走れるし。
私が・・・。
陰陽道の術を使うのだってそう。
いつも昌浩が危なくなったら兄さまが離魂術を使って、神将たちと助けに行ってる。
私だって・・・。
でも術を使おうとすると、いつも宵藍に止められるの。
離魂術は生命を削るからって。
大事な、いざという時にしか使うなって。
あと、宵藍がいない時にも使っちゃダメだって。
解るけど、でも・・・。
本当は羨ましいの。
大人の姿になりたいの。
まだまだ大人になるには時間がかかるから、だったら術を使ってでも大人の姿になりたいの。
だったら宵藍とつりあうから。
私と同じ蒼い瞳。
でも最初に見た時は、氷のように冷たそうって思った。
でも違うって解った。
それは凄く一途で頑なな気持ちの裏返し。
兄さまを想ってやまない気持ち。
羨ましかった。
でも今はずっと傍にいてくれる。
嬉しいけど・・・。
やっぱりずるい。
だからせめて・・・・・・夢の中ならいいでしょ?
子供の私じゃなくて、ねえ。
貴方の傍に女性の姿でいたい。
そう願ってしまうのは、ダメ?





ふと気が付き、閉じていた瞼を開ける。
月明かりがうっすらと部屋に影を落としていた。
身じろぎしながら、隣にいる青龍の長い髪にそっと触れた。

「どうした?」

寝ていると思っていたのに不意に声をかけられて、は青龍の顔を見上げた。
柔らかく細められた蒼い瞳が自分を見ている。

「何か見たのか?」

陰陽師の見る夢には意味があるときがある。
それがたとえ二歳の幼子であったとしてもだ。
しかもは晴明と同じ血をわけた妹。
何か見ても不思議ではない。

「・・・ゆめのなかなら」
「夢がどうした。」
「ゆめのなかなら、宵藍とつりあうから。」

小さく告げて、宵藍の胸元に顔を埋めたの頭に手を置いた。

「気にするな。」

どんな姿であれ、おまえはおまえだ。それ以上でもそれ以下でもない。
ただ、夢の中でおまえの願いが叶うというなら、ゆっくりと眠れ。