「大丈夫よ。わたしって、意外と強くできてるから。」
君は、よくそう言って笑う。
my page.
「・・・・・だから。がキライになった訳じゃないんだ。」
「・・・・・・。」
「何つか、その・・・・それだよ。それ。」
「・・・・・?」
「別れ話してんのに、マユ一つ動かさないお前を見ると、自分は全然思われてねぇんだなって思う。」
じゃあ。惨めったらしく泣いて喚けばいいの?
別れ話をされてもマユ一つ動かさなかったは、そう思う。
現在、別れ話を切り出されている場所も場所で、ココは大学の学食だった。
ちょうど昼時であった為、そこは人で賑わい、誰も自分たちの会話を聞く者なんていない。
ざわざわとした室内の雰囲気がノイズがかった何かの効果音のようにの聴覚を侵した。
「元々からお前がそういう性格ってのは、分かってるんだけど。俺は、もっと・・・・。」
「素直で、可愛らしい人と付き合いたい?」
の見透かしたような質問に、目の前の席に座っている男は何も答えなかった。
少しの間を流した後、は、一息吐き・・・目を細めて笑う。
「分かった。もう、十分よ。2年間、楽しかった。」
++++
「・・・ふられるってのは、どんな気持ちだ?」
「・・・・・聞いてたの。悪趣味。」
いやらしく。とても、いやらしく口端を吊り上げて笑うこの男は、玄奘三蔵といって
以前、教科書を忘れて困っていた時に、偶然、隣の席だったコトから、何となくそのままの流れで
講義が被ったときだけ、隣に座ったりする仲である。ただ、それだけだ。
彼を一言でいうなれば、絶世の美男子といったところであろうか。
いや。ちょうちんブルマを履いた白馬の王子様とは遠くかけ離れるのだが。
人間離れした、その無駄のない秀麗な顔立ちと、どこまでも輝く金糸の髪、ビー玉のような紫暗の瞳。
華奢なカラダ。しかし、筋が張っていてキレイな鎖骨とか何だかんだで、全く非の打ちどころがない。
故に、別に隣に座ったりするのに、抵抗はないのだが、周囲の視線(特に女子)が些か不快だったりする。
「生憎。生まれて此の方ふられたコトが無いんでな。少し、興味がある。」
「・・・・おまけに嫌味ね。別にどうってコトないわ。」
「ふん。つまらん。」
「楽しい話じゃないんだから、当然よ。」
将に淡々と板書をしながら、口だけを動かす2人。
不意に三蔵の手が止まる。それに気づいたのか、は、手は止めないものの、視線だけを彼の手元へ移した。
「・・・・なんだ、凹んでいるのか・・・?」
今日に限って、よく喋る。
は、そう思う。普段は、腹が立つほど寡黙な人間の癖に、気分なのか何なのか。
彼には珍しく、干渉じみた科白の連続で、何やら違和感を覚えた。
「だから、そんなか弱いお嬢さんに育ったつもりはないんだけど。」
目を細め、は、笑う。
漆黒の艶やかな髪がサラリとゆれた。
三蔵は、一度両目を見開いたのだが、すぐにいつもの調子に戻る。
「そうか。そりゃ、頼もしいな。」
「ええ。ありがとう。」
止まっていた、ペン先が再び動き始めた。
+++
あれから2週間。
それまで、彼氏というポジションに就いていた男は、見知らぬ子と仲良さそうに昼食を取っていた。
私とはまるで正反対な。明るくて可愛らしい女の子だった。
「メシ行くぞ。」
午前中の講義が終わり。を昼食に誘った。
明らかに、この女はメシを食ってないのが分かるからだ。
別に何の義理も無いのだが、隣の席の人間が日に日に弱っていく様を黙って見つめる趣味はない。
「え。もう、食べたよ。朝、遅かったし。」
何、抜かすボケ。
今日は、一コマ目から講義が入っていた筈なのに、朝メシが遅い意味が分からない。
「ガタガタ抜かすんじゃねぇよ。」
「・・・・朝、モリモリ食べたから、これ以上食べたら吐く。」
「言っておくが、俺は吐いても食わせる。」
「鬼畜。」
細い腕を掴み、ズルズルと引きずりながら、車の停めてある場所を目指す。
目的地に着いたところで、車のドアを開け、助手席にをポイッと放り投げた。
自分は、すばやく運転席へ乗り込み、エンジンをかける。
「・・・・何なの?」
「そら。メシだろ。」
「学食じゃないの?」
「飽きるだうろが。」
「食べたくない。」
「食わせる。」
++++
「・・・・・いや。人道的に考えて、こんなに食べないんじゃないかな。」
あっという間に着いた少し雰囲気のあるイタリアンレストランで。
の目の前には、メニューの四分の一はあるんじゃないか、と思うくらいの数の料理が並べられている。
三蔵自身もそれは、分かっているようで。微かにバツの悪そうな表情を見せた。
実際に奢ってくれるそうだし。流石に無理やりとは言え食べなくてはならないだろうと考えたは
しぶしぶフォークを握って、サーモンのカルパッチョを摘んだ。
とたんに、彼は、口端を吊り上げる。
「・・・・人道的に考えて。どう見ても。お前は、だいぶ凹んでるようじゃねぇか。」
別に、彼女がやっと食べ物を口にしたから安心した訳じゃない。
それで、満足している訳でもないし。ある意味、目的であるが。完全な目的である訳じゃない。
三蔵は、思う。
携帯の番号は、教えてある。
しかし、彼女は、振られて食が細くなるほど傷ついていたのに。自分への電話はなかった。
正確に言えば。彼女は、自分を必要としなかった。
何より、それがやるせない。
「どこが?」
それでも、は、しれっと三蔵へ言い放つ。
思わず、深い深いため息を零した。
「気づいてないのか。重症だな。」
「全然、平気よ。失恋ぐらいでどうにかなるような弱い女じゃないって言ったでしょう?」
「現実とかみ合ってねぇんだよ。」
はフォークでもう一度、サーモンのカルパッチョを突き刺した。
「大丈夫よ。わたしって、意外と強くできてるから。」
ほら。そう言って、やはり君は、笑う。
泣いて、欲しいと思っているんだ。
その鉄の仮面を粉々に砕いて。高い鼻っ柱をボキリと折って。
それが、仮にも他の男を想っての涙だとしても。
誰でもない、自分が。その鉄の仮面を粉々に砕いて。高い鼻っ柱をボキリと折って。
みっともなく。ガキみたいに、泣き喚いて欲しいと思っている。
ただ、それだけで、バカな自分は、君に必要とされてると思えるから。
柄じゃなくて。全然、柄じゃなくても、ただ、君に自分を必要としてくれ。と、心底、願う。
「泣けよ。」
「だから・・・・。」
「御託なんざ、どうでも良いから。泣いて、喚けよ。」
頼むから。自分を必要にしてくれと。願う。
「何を言っても。てめぇの顔は、泣きたくてたまらないって顔をしてる。」
の漆黒の瞳が大きく揺れた。
三蔵は、慣れた手つきでタバコを加え、手早く火をつける。
「ココがいやなら。別に、場所を換えてやってもないコトもない。」
「や。出たら、三蔵から犯されそうだもん。」
「この、クソアマ。せっかくの行為を・・・・・。」
ほら、目が潤んできている。
だけど、は、泣くことに慣れていないようで、悪態だけが宙ぶらりんに垂れ下がる。
他人の涙がこんなにキレイだと思ったコトは、ない。
そう。そうやって素直に泣いて。
自分の前だけで。あんたの泣き場所は、ココだと。
絶対に自分を必要とするように。そんな場所を作って。
三蔵は、口端を吊り上げる。
「これから、なんかあったら。電話しろ。聞いてやらないコトもない。」
彼女の小さな頭部をぐしゃぐしゃと撫でてやると、艶やかな黒い髪がサラリと肩から落ちた。
これは。彼女を思っての行動なんかじゃない。
ただ、彼女に必要とされたい。という、自分の要求を満たすための茶番だ。
それを知ってか知らずか、は、顔を上げて、今までと一味違う笑みを見せる。
銀の雫を両目に溜めて。
「・・・・・別に。電話してやらないコトもない。」
予想外の科白に、三蔵は、ふんっと鼻を鳴らして笑った。
「ぬかせ。」
ただ。自分を必要としてくれと。ひたすらに願う。
あとのかき。
蒼稜ますみさまーー。姫、ご出産おめでとうございます!!
何か失恋とかでゴタゴタした感じの二人という訳で(アバウト)
ちょっとヘタレた三蔵君で。全然、前彼の絡みもないし。見所がなくてかたじけないのですが。
これで、よろしかったでしょうか?
もし、お気に召されなかったら。書き直します。何度でも(笑)
でわ。これからも、蒼稜ますみさまの心の平穏と幸せを深く、深くお祈りしております。
でわわ。pasucaでした。
pasuca様!!!有難うございましたvvv
好意に甘えさせて頂いて、チイ姫の出産記念にリクエストしてしまいました。
物凄く素敵な三蔵様にメロメロです。癒されます。
育児の疲れもなんのその!
最後の「ぬかせ。」でくらくらですvvv
本当に有難うございました!
蒼稜