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一人仏頂面で同僚の後ろからついていく三蔵。
昨日になって、同期の悟浄から合コンの頭数合わせにと拝み倒されて、渋々承諾したまでは良かったが、
やはりそういうものが性に合わない三蔵は、何度も大きな溜息を漏らしつつ会場へと足を向けていた。
(どうせ飲むだけだ。話なんかするつもりも無ぇしな・・・。)
会場となっている居酒屋に足を踏み入れ、三蔵を含む男5人は店員に案内され奥の小上がりへと通された。

「悪ぃね〜遅くなって♪」
男の代表である悟浄が愛想良く、既に座っていた女性陣に挨拶した。
「ねっvvカッコいいでしょ〜悟浄vv」
と、女性陣の代表の雪菜が女性陣に相槌を求めた。
うんうんと頷く女性達の中で、一人そっぽ向いている女が一人。
そして悟浄に同調して三蔵以外は皆、挨拶をする。

「なぁ、今日すげーレベル高くねぇ?」
「やばっ俺絶対お持ち帰りしたい子見っけた♪」

コソコソと男達が話しながら、適当に座っていく。
三蔵はと言えば、どうせ人数合わせなのだからと端の席に早々に腰を下ろした。
その瞬間、女性陣の目が三蔵へと移った。

「ちょっ!嘘っvv超イケ面だってvv」
「綺麗な人〜vvアタシあっち行きたい〜vv」

同じくコソコソと女性陣の間で交わされる黄色い声。
その声に逸早く気付いた三蔵が、眉間に皺を蓄えた。
(・・・うぜぇ;)

「あ〜、じゃぁまずは自己紹介でも・・・」

悟浄が声を掛けて、男性陣から紹介となった。

「悟浄でぇす♪よろしく〜?」
「三村です。」
「羽田で〜す♪」
「加藤です。」

三蔵以外が済むと、一斉に三蔵へと視線が集まった。
その視線に耐え切れず、舌打ち一つしてしまう。

「・・・玄奘だ。」

三蔵の苗字を聞いた瞬間、女性陣の態度がそわそわし始める。
あからさまに解るその態度に、ついつい顔を背けて知らん振りを決め込んだ。

だが、明らかにその女性陣から雰囲気の違う女が一人、何気なくテーブルの下にメニューを広げて眺めている。
向かいに座っている女。
三蔵はその女に視線をチラリと向けて、すぐに逸らし煙草に火を点けた。
(・・・こいつも人数合わせか?)
同じような形で来たのかと思うと、何となく嫌悪はしなかった。
どうみても全く男に興味を示している訳ではない。
何故か口の端が緩んだ。

「未来です。宜しくお願いしますvv」

いつの間にか自己紹介も進んでいて、気がつけば目の前の女が残った。
それに気付いた女は、ふと顔を上げて「。」それだけ言って再びメニューに目を戻した。
思わず女慣れしている悟浄でさえ、苦笑するような状態に三蔵は益々口角が上がった。


一頻り質問等を聞き返しながら飲み出せば、やはりと名乗った女は一人でビールを空けていく。
それを時折見詰めながら、三蔵もまたビールを呷った。




人数合わせにと連れて来られていたは、初めから何も関わらないと決めていた。
面倒な事は嫌いな
ただ飲みに来たのだと言い聞かせていた。
ふと、何かの視線に気付いて一瞬だけ目を横に動かす。
(・・・。)
直ぐに逸らした目は、に疑問を持たせた。
一瞬だけ向けた目は、三蔵と合ってしまったから。
(・・・この人も合わせだろうな・・・。この態度は・・・。)
テーブルの下に広げたメニューを眺める振りをしながら、気は三蔵へと向けていた。
時々此方をみているのは気付いていたが、どう見ても合コンに来た態度ではない事から、
物珍しさから自分を見ているのだろうと結論付けた。

「でさ?チャンは?好きな男のタイプってある?」

悟浄が女達に質問していた事を、にも投げかけた。
とりあえず答えない訳にはいかないので、は顔を上げて悟浄を見た。

「どーかなぁ。タイプもクソも、好きになっちゃえばタイプだし?あえて言うなら・・・」

視線を左右に動かしてから「真っ直ぐな人。」と答え、再びビールを飲み始めた。
その後、男達にも同じ質問が返されて、三蔵にまでやはりその質問が投げかけられた。

「タイプなんざ無ぇよ。好きになっちまえば、それがそうなんだろ。」

吸っていた煙草を潰して、チラリとを見た。
その時、が顔を上げていて自分を見ていた事に気付き、直ぐに言葉を付け足した。

「あえて言うなら・・・男にガッついて無ぇ女の方がいいがな。」

フンッと鼻で笑ってビールを追加した。

「あ、アタシも。」

がジョッキを上げて三蔵に頼む。

「悟浄、二つ追加だ。」

三蔵は悟浄に頼んで、新しい煙草に火を点けた。







二次会にと向かおうとその場がお開きになり、悟浄が会費を集めると言い出せば、
なにやら女性陣の方がざわめきだした。

「あ?何よ、どした?」
「え〜やっぱさ〜、こーゆーのって男が奢ってくれるとか、ないわけ?」

雪菜が苦笑しながら強請る様な目で悟浄を見上げる。
それに苦笑した悟浄は、男達を伺った。
だが、男達にしてみても、一次会で奢ったら二次会まで全て奢れと言う事に聞こえてきて、誰しもいい顔するものは居なかった。

「いや、い〜んだけどよ?俺が出しても・・・」

そのやりとりにの眉が寄った。
そして雪菜達に一瞥くれてから、鞄から財布を取り出して全員分の料金を悟浄に押し付けた。

「それで足りるでしょ?アタシ二次会はパスだから。じゃ、アタシはこれで。」

片手を上げてさっさと靴を履き始めた
その行動に三蔵の視線が自然と女達を睨みつけていた。
そして三蔵も自分の分を悟浄に押し付けて、の後を追った。
店を出てみれば、既にの姿は無く、辺りを見回したがどちらの方向に行ったのかも解らなくなっていた。

「・・・クソッ・・・。」

小さく舌打ちして、三蔵は肩を落とした。
何故だかとは、まだ一緒に居たいと思っていた。
話もしたいと。
だが、それが叶わなくなってしまったのは、あの女達の所為。
盛大な舌打ちを居酒屋に向けてから、三蔵は仕方なく家へと向かった。










翌日、会社へ出勤した三蔵は、悟浄を捕まえて喫煙室へと連れ込んだ。

「おい、昨日の女の会社を教えろ。」
「はぁっ!?;何よ三蔵、お前全然入ってきてなかったろ〜が;」
「いいから教えろ。全員同じ会社だろうが。」

睨みを利かせて悟浄に詰め寄る三蔵に、両手を上げて降参のポーズをした
悟浄は、雪菜の名刺を内ポケットから取り出した。

「此処。でもって、誰気に入ったのよ、三蔵は。」
「煩ぇ。」

その名刺をもぎ取り喫煙室を出た三蔵は、定時になると直ぐに会社を出た。


を見失って家へと戻った三蔵は、一人ソファに転がりの事ばかり考えていた。
何かを話した訳でも何でもなかったが、ただもっと話がしたかった。
話がしたいと言って、自分が無口なのは承知だが、だがまだ何かの事を知る術があったような気がしてならなかった。
あんな場でであった事が悔やまれるが、初めに感じた何かは三蔵にとって
初めての何かであり、それは遊びで堕としてきた女とは違う。
もっと大事な何かのような気がして、もう一度に会ってそれを確かめたかった。


悟浄からぶん取った名刺を頼りにその場所へと急ぐ。
定時上がりなら、既に会社には居ないかもしれないが、とにかく行ってみようと思った。
割と近い場所に位置したビルの中にあるその会社は、まだ明かりが煌々と点いていた。
(まだ居るか・・・)
入り口に立ち、中の様子を伺おうとした時、雪菜の顔が見えて咄嗟に逃げた。
面倒な奴に見つかるととんでもない事になると、眉間に皺を寄せビル入り口で待とうと決め下へ降りる。

だがいつまでたっても下りて来ない
先程から、昨日見た面々は出て行ったのを見ているが、だけが出てこない。
(帰ったか・・・)
勢いづいて来たはいいが、こうもタイミングが悪いのかと自嘲する。

「・・・仕方無ぇ・・・。」

ビルに預けていた背を持ち上げて、踵を返そうかと思ったその時、気だるそうな表情のが自動ドアを潜り抜けてきた。

「おいっ!」

躊躇せず声を掛けた三蔵は、がこちらに振り向き目が合った瞬間、物凄く驚いて目を見開いたのを見逃さなかった。

「・・・どうしたの・・・?」

瞬きをしながら近づく三蔵に問いかける
その事に、何故か安堵する。

「いや、もう帰るのか?」
「え?あ、うん、帰るけど・・・。あ、そうか、皆ならもう帰ったよ?残念でした。」

冗談交じりにヒラヒラと片手を振れば、その手を三蔵がしっかりと掴まえた。

「お前を待っていた。」

小さい声だが強く言い放った三蔵に、は少しだけ眉を寄せた。
どう考えても昨夜の自分に何か話があるとすれば、自分の態度の批判だろうかと、大袈裟な程大きな溜息を吐いた。

「何か文句でも言おうと?」

そう言って面倒臭そうに三蔵を見上げた。
だが、その問いにフッ顔を緩ませた三蔵に、の鼓動がいきなり速度を増した。

「文句を言うなら・・・他の女共に言いてぇくらいだ。には何も無ぇ、それどころかアンタの態度に俺は好感が持てたがな。」

好感が持てたと言われて、突然顔を真っ赤にした
その表情の変わり具合に、益々三蔵の顔が緩んだ。
言われ慣れていないのか、突然視線を泳がせ始めたに、三蔵は掴んだ手を緩めて手を繋ぐ。
拒否されないのをいい事に、そのまま手を引き歩き出した。

「ちょっ・・・何処・・・」
「昨日の酒は不味かったんでな。・・・お前と美味い酒が飲みたい。嫌か?」

肩越しに振り向いて微笑んだ三蔵に、は耳まで真っ赤にして俯いた。
そんなを見てクッと喉で笑うと、繋いでいた手を離し肩を抱き寄せた。

「・・・お前のタイプに合わねぇか?俺は。」

その問いにはカリカリと指で頭を掻いて、照れ臭いのを誤魔化すようにして不貞腐った。

「昨日の今日でしょうが・・・。」
小さく呟いた言葉に、三蔵は「知るか。」と笑うと、
が気になり過ぎた。お前をもっと知りてぇんだよ。まぁ・・・知り過ぎたら・・・二度と手放せ無ぇだろうがな。」
「う・・・嘘臭い・・・;」
「嘘だと思うなら、この先見ていろ。俺はお前を必ず俺のモノにする。」

突然の顎に手を掛けて強引に上を向かせると、すぐさまその唇を自分の唇で塞いだ。
驚いて目を見開いているの目を、細めた目で見つめながら口内を犯す。
そして離された唇は艶を帯びて、夕日に照らされた。

「やべぇな・・・。欲しくなる・・・。」

そう言って微笑んだ三蔵は、の頬に手を掛ける。
何が起きたのか未だに理解出来てないような顔を向けるに、三蔵はスッと顔を寄せて耳元で囁いた。

「美味い酒・・・飲まないか?」

その言葉には静かに頷いて、ゆっくりと顔を緩ませた。

「・・・アタシでいいわけ・・・?」
「お前が良いと言っている。」
「そっか・・・。」

照れ臭そうに何度も視線を泳がせているに愛しさがあふれてくる。
理性もそこそこに、の肩を抱きなおした三蔵は、片手を上げタクシーを止めた。

タクシーに乗り込んで、三蔵は自分の部屋へと向かわせた。
これから始まる二人の何かを既に想像しながら・・・。









Fin

2006・8・19





管理人が毎日のように通っている『Just in Time』の由羅様より、頂いた宝物ですvvv
光栄な事に、11000番を踏ませて頂いたうえに、素敵な三蔵夢を持ち帰らせて頂きました。

由羅様のサイトでは、他にも素敵な小説が沢山ありますよvvv
キャラがそのもので。管理人は、毎日悶えまくっています(笑)
また最遊記や、ビズ、WAのメンバーによる日記があります。
コメントを残すと、お返事が返ってきますよvvv

由羅様、素敵な夢を本当に有難う御座いました。