誰が望んだ?
私か・・・・・・・・?
それとも、彼か?
日常的な現実から突然引きずり出された。
――― The beginning ――― act.1
大学の構内を物思いに耽りながら歩いている一人の女性。
最近、夢の中で誰かが呼んでいる。
なんだか、とても懐かしい感じがする誰かが・・・。
朝、目が覚めても夢の内容までは覚えていない。
ただ一つ覚えているのが、呼んでいる誰かの左右の瞳の色が違っているということ。
理由はわからないが、その綺麗なオッドアイに私は囚われていた。
教授に頼まれて、明日の講義の為の資料を探しに図書館へと向かっている。
何が悲しくて一人で行かなければならないのか?
たしか、その資料はかなりの量があったはずである。
校内きっての切れ者。
学力も常にトップクラスの。
その容姿も整っており、男子の憧れの的。
これまでに何度か告白されたが、全く興味が無いので全て断っている。
だが、それでも後を絶たないのだから困ったものである。
ふと、子供の頃のたわいも無い約束を思い出し、眼鏡の奥の蒼の瞳がスーッと細まった。
あれは確か、3才になるかならないかの頃。
引越しで離れてしまった、今は何処にいるか分からない相手。
ああそういえば・・・、確かその子も夢と同じオッドアイ。
金と蒼の綺麗な瞳を持つ男の子だった。
あの頃の約束・・・。
「もう、時間が無いんだ。」
「・・・?」
「必ず、迎えに来る。」
「何処かに行くの?」
「ああ。だが、必ず戻ってくる。お前を迎えに来るからな。」
今にして思えば、子供の癖になんとも大人ぶった子だったか。
けれども、別に嫌味だったわけではなく。
その子との約束を覚えているからこそ、未だ独り身だったりするわけで・・・・。
思い出に浸っていたので、目の前に突然光が現れたのに気付くのが一瞬遅れた。
「な、何?」
スローモーションのように周りの景色が流れ、歪んでいく。
もしかして・・・・・。
かなり、ヤバイのかもしれない。
眩しくて、目を細めながら足を進める。
普通はジッとしているものなのだろう。
が、いかんせんは――――
化粧をし眼鏡をかけて素顔を隠しているは、気が短かったりする訳で・・・・・・。
「行ってやろうじゃない。何処に出るか楽しみだわ。」
不敵な笑みを浮かべ、一歩、更に一歩。
ドスッ!!!
「キャッ!」
「おっ・・・・・・・・・。」
人にぶつかった?
何気にいい声ね。
そんな事を思いながら、その人に抱きとめられた次の瞬間には目の前に景色が戻っていた。
が、それはどう見てもさっきまでの大学のソレではなく。
紛れも無く異世界のソレであり・・・・・・・・・。
は盛大なため息をついていた。
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