彼らは 出逢う。

それは 偶然なのか。

それとも

―――必然なのか







――― The beginning ――― act.2






戻ってきた景色。

現れた人達。

目の前数センチを飛び交う弾丸。

現実ではなく、非現実的。

現代ではなく、それは異世界。

ありえない事実に溜息をつきながら、未だに自分を抱きしめている男を見上げた。
漆黒のサラッと風になびく髪。
その間に揺れる、色違いの金と蒼の瞳。



「太陽と空みたい。」
「っ――――。」



の言葉を聞いて、焔は息を呑んだ。
500年前、自分が愛した女性も同じ事を言った。
今、俺が存在する理由。
それが、の存在。
転生させられたとの約束を守る為に・・・。

まさか、腕の中のこの女性がなのか?

100%の確立では無いにしろ、異世界から迷い込んできたのには
何かしらの理由、もしくは力が働いているハズ。
それが一体何なのか・・・・・・。




「ねえ、私を呼んだのは貴方?」
「いや、俺は呼んだ覚えは無い。」
「そう?貴方だと思ったのに・・・。じゃあ。」

の視線は焔から、少し距離を置いた三蔵一行に向けられた。

美丈夫4人組み。
金髪に紫暗の瞳。ただならぬ雰囲気を持つ男。
漆黒の髪でモノクルの奥に光を宿す翡翠の瞳。笑顔だがどこかその素顔を読むことの出来ない男。
鮮やかな紅い髪と同じく紅い瞳。どこか兄貴的な存在の男。
茶髪で黄金のように輝く瞳。男と言うより少年に近い彼。
4色の瞳を順番に見つめていく。

「すいませんね。僕たちでもないんですよ。」

申し訳なさそうに話す翡翠の瞳の男。
はその言葉で、まだ焔に背後から抱きしめられたまま仁王立ちになった。

「じゃあ、どうして私が今ココにいるのかしら?!」
「フン、そんなもんは知らん。俺には全く関係ない。」
「へえ。貴方ってお坊さん?だったら、そんな言い方ないんじゃない。」
「坊主だろうが、なんだろうが、関係ない事にいちいちかまってられる程暇じゃねぇからな。」
「まあまあ、三蔵。」
「言ってくれるね、三蔵サマは。こんな可愛い子が困ってんだぜ?俺は力になるぜ。とりあえず、名前教えてくんねぇ?
俺は沙悟浄。悟浄でいいぜ。」

そう言って、ウィンクをしてくる男は悟浄と言った。
翡翠の瞳の男は、金糸の髪の男を三蔵と呼んだ。


もしかして・・・・・。
もしかしなくても。
そこから導き出される答えというのは、中国の・・・・・・・
『西遊記』ではないだろうか?
と言うことは、残りの2人は『猪八戒』と『孫悟空』か。


そう思った矢先、翡翠の瞳の男が猪八戒だと告げた。
そして、金色の瞳の少年が元気よく悟空だと名乗った。


諦めにも似た溜息を吐き出して、も自己紹介をした。



「私は、。で、貴方たちは?」



非現実的な事は、もう理解した。
自分の身に起こったこの出来事。
それが何を意味するのかは、解らない。
だったらこの状況に馴染み、なんとか元の世界に帰る方法を見つけないといけない。
三蔵法師一行は分かったが、未だ自分を抱きしめたままのオッドアイの男と、その両側に立っている2人の男は知らない。
だから、その綺麗なオッドアイを見上げた。



「焔だ。」

それに続き、左側の線が細く藤色の髪を後ろで纏め、瞳を閉じている男が紫鴛。
右側の、右目に黒い眼帯をして明るめの茶髪を立てている男が是音と名乗った。


「よろしく。・・・ところで、焔さん。いい加減離してくれません?」
「あ・・・・・、ああ。すまない。」

ようやく離れた身体。
これで彼らと真正面から向かい合う事ができる。
眼鏡の奥の蒼の瞳をスッと細めて、焔を見据えた。

「貴方たちは、何者なの?」
「・・・・・・。どうしてそう思う。」
「纏っている雰囲気が明らかに違いすぎる事。それと、空間を移動していた事。
普通の人間には決して出来ないと思うのだけど?」
「フッ、察しがいいな。確かに、俺たちは人間ではない。」
「じゃあ、何?」
「神だと言えば信じるか?」


『人間』ではないと言った焔は、『神』だと言った。
自身、そこまで神頼みなどばかげた事はしないタイプ。
『神』が居ると思うか?と聞かれたら、間違いなく『イナイ』と答えるところだが・・・・・・。
ここは異世界。
ありえない事でも起こるのが、今の現実かもしれない。
だったら・・・


「信じないけど、信じてあげる。」
























突然。
何の前触れも無く、焔一行と三蔵一行の間に眩しい光が現れた。
その光の中から、楽しそうな景気のいい声があがった。
ソレを聞き、明らかに嫌そうな顔をするのは三蔵一行。
瞬時に身構えるのは焔一行。
その間にたたずむは盛大な溜息をつき、収まりつつある光の中の人影を見据えた。



「今度は誰よ。まったく。」

「くくっ。言ってくれるね。」

楽しそうに、心底楽しそうな顔をした女性。
その服装は、なんともきわどい物で・・・。

「・・・、かなりきわどい服ですね。風邪引きますよ?で、貴女も神ですか?」
「そういうところは相変わらずだな、。」
「?誰それ。」
「くくっ、知らなくて当然だろうな。おう、焔。お前もイロイロやってるみたいじゃねぇか。」

紅い唇をニヤッと上げた神様は、視線をからその背後の焔へと向けた。

「・・・・・・ああ。ところで、観世音。さっきのは本当なのか?」
「んだ。そんなことも知らずにコイツを桃源郷に呼んだのか。」
「俺が、呼んだ?・・・確かには探しているが。」
「ふっ。自覚無しか。神が聞いて呆れるぜ。」

「そこ!勝手に2人で話しを進めない!!!」

腰に手を当て、ビシッと指を立てたは2人の神の話に割って入った。

「きわどいお姉さんの・・・
「観世音菩薩だ。」
「観世音菩薩の話だと、やっぱり焔が私を呼んだって事じゃない。だったら、今すぐ帰して。神ならそれくらい出来るでしょ。」
「・・・、すまない。俺は知らない。」
「じゃあ、菩薩ちゃん!」
「クククッ。性格変わったな、。」
「だから、違うって!!ああ、もう。話逸らさないでっ!!!」
「ワリィな。俺様がかかわった事じゃねぇからな。焔に見つけてもらえ。」


・・・。神様が2人。いや、4人か。
いるのに誰も帰し方を知らないと言う事に、は目眩を覚えた。
疲れがドッと押し寄せ、スーッと血の気が引いていく。
ヤバイと思ったのと、意識が遠のくのは同時だっただろう。
そんなの異変に気付き、倒れる前にその身体を抱きとめたのは観世音菩薩だった。


腕の中のを愛おしそうに見つめるその瞳は、いつも何か企んでいるような光は無く、
その名の通り慈愛に満ちていた。



















やっと出逢えたな、

後は、お前の500年前の願いを叶える為に足掻いてみろ。

その為に、お前は力を封印したんだろう?

俺は上から看ててやるよ。

お前の生き様を、

そして、奴等の生き様をな―――――。













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