あたたかい光。

どこか 懐かしい空気。

身体が何かを覚えている。

ここは、何処だ。






――― destiny ――― act.1





蓮の咲き誇る池のほとり。
きわどい服装をした人物がイスに座って、その足を組み直した。
そして、紅い口紅のひかれた口角を上げた。

「くくっ。やっと現れたか。ちゃんと出会わせてやるよ。それがお前の望みだったからな、。」

彼女は悪戯な笑みを浮かべて、目の前に己の両手を広げた。
瞬間、一面光に包まれた。
ポウッと桜色に染まっていた空気が薄れ、ゆっくりと視界が開ける。
そこには一人の少年が立っていた。
少年が現れたのと同時にその部屋の扉が物凄い勢いで開き、息を切らせた中年の男性が駆け込んできた。

「か・・・観世音菩薩様!大変です!龍珠の守り人が・・・・・・・・」
「見つかったんだろ?」

そんな二人のやり取りを、ただ黙って見つめるのはだった。
話を聞く限り、キレイな女性が『観世音菩薩』で、慌てふためいている気の弱そうな男性が『次郎神』。
ああ、確か『観世音菩薩』と言えば五大菩薩の一人で、慈愛と慈悲の神様なハズ。
でも、そのスケスケの服・・・・・で・・・・・?

「自愛と淫猥の象徴って感じですね。」
「ええい!口を慎みなさい。このお方は・・・・」
「慈愛と慈悲の象徴、五大菩薩の一人、観世音菩薩サマでしょ?」

次郎神の言葉をさえぎり、口を挟んだ

「くくっ。言ってくれるねぇ。お前、名前は?」
「僕ですか?です。知ってるんじゃないんですか?だって、僕死んだんでしょ?」
「偽りの肉体はな。」
「・・・、それってどういう事ですか?」

尋ねながらもは己の身体に目をやった。
全く以前と変わっていない姿。
『偽り』とは、どういう意味なのだろうか。







語られた事実。





それは、生を受ける世界が違ったということ。
死の直前に偽りの身体から、本来の肉体に移り『死』から免れたということ。
龍珠の守り人。



それが、自分。


「でも龍珠なんて、僕持ってないですよ?」
「気付いていないだけさ。『氷雨』の剣、その中にはめ込まれてある。念じてみろ。」
「剣・・・ですか。」

は目を閉じて、心静かに念じた。
ポウッと暖かい空気が両手を包み、そして何かの重みがかかる。
目を開けると、そこには珠のはめ込まれた一本の剣が現れていた。

「やっぱりな。」
「これが『氷雨』ですか。・・・馴染みますね、これ。」
「だろうな。それは500年前からお前のモンなんだよ。」

氷雨をかまえて型を取るに、菩薩がニヤッと笑みを向けた。
それを見たが眉をしかめる。

「何か嫌な予感がするんですけど・・・。」
「察しがいいな。お前、今から桃源郷に降りて三蔵一行と旅をしろ。」
「三蔵?・・・て、あの三蔵法師の事ですか?」
「ああ。その龍珠の力、天界にいても軍上層部の奴等に利用されるだけだ。
牛魔王蘇生を阻止する方に使う方がよっぽどかいいだろ?」
「確かに、自分の力を利用されるのは嫌だけど・・・。じゃあさ、一つ僕のお願い聞いてよ。
それなら、三蔵一行と旅をしてもいいよ。」
「言ってみろ。出来る事なら聞いてやる。」
「観世音菩薩様!!!何を言い出すんですか。」
「煩ぇんだよ。で?」

気になっている奴の事を話す。
きっと、今頃思いつめて泣いているだろう。
だから。

菩薩は「んだ、そんな事でいいのか?」と、直ぐにの身体に光を纏わせた。

「光に包まれるまでだ。それが、リミット。
その後は・・・、そうだな。あいつ等が寄りそうな町の側に落としてやるよ。自分で出会いな。
やたらと馬鹿騒ぎしてる四人組だ。」
「わかった。」
「自分の身は自分で守れよ。」
「フン、当たり前だろ?」
「くくっ。変わってねぇな、。――言って来い。」








NEXT


はい。ようやく観世音菩薩様の登場でした。
次は。。。はい。次こそは出会います。
お待ち下さい。