あの時から、お前は・・・・・・否、お前達は自由を求めもがいていたな。
これで、変わるんだ。
500年の時を超えて、また出逢うんだろ?
・・・・・・
・・・・・・金蝉
今度こそ、その手を離すんじゃねぇぞ。
俺がお膳立てしてやったんだ。
せいぜい楽しませてくれよ。
――― destiny ――― act.2
ふう。
確かに麗にサヨナラを言えた。
案の定、泣いて自分を責めていた事に苦笑をもらした。
アイツらしい。
ま、最期の顔が泣き顔から笑顔に変わったんだ。
結果オーライだな。
「にしても・・・・・・ココって何処?」
見渡せど、見渡せど、辺りは木・・・木・・・木・・・森。
「どうせなら町に落としてよ。」とボヤキながらもは足を進めた。
西の方向に歩いていれば、きっと町にも着くハズ。
太陽が頭上から少し傾きかけているので、だいたい昼過ぎなのだろう。
そこで初めて、お腹がすいている事に気付いた。
木の実?
イヤ、それは有り得ないだろ?
お金・・・・・・あっ、そう言えば。と思い出して、制服のブレザーの胸ポケットから一枚のゴールドカードを取り出した。
そう、お金はある。
三仏神名義のカードを菩薩がくれた。
だが・・・、ココは町ではない。
使えない・・・。
溜息と共にそれをしまい、風になびく少し長めの前髪をかきあげた。
「こんな森の中に人間がいるぜ。」
「殺っちまえ!!」
突然上がった声の方を振り返ると、色黒い肌に尖った耳、突き出た牙の・・・。
見るからに人ではない奴等がざっと50名程。
「僕に何か用ですか?」
何事もなく町に着けたらよかったのに。
人ではない彼ら、確か妖怪と言っていたっけ。
―――殺らなきゃ、殺られるぜ?
菩薩の言葉が脳裏をかすめた。
僕・・・、こう見えても案外ヤワなんだけどなぁ。
でも、確かに殺らなきゃ、殺られるって雰囲気だね、コレは。
妖怪からの妖気に、は身体を震わせた。
一人の・・・、否、一匹の妖怪がに向かって飛び出した。
それが、戦いの合図。
の手には、『氷雨』が握られていた。
そして、向かってくる妖怪に剣を振り上げ、薙いで行く。
返り血を浴びる事無く、舞を舞うかの様に・・・・・・。
ただ、ただ、無心で・・・・・・。
「なあ、八戒。次の町ってまだ遠いのか?」
「この森を抜けたらスグですよ。」
ジープを運転しながらニコヤカに返す八戒。
助手席では、いつもの様に三蔵がタバコを吸っていた。
「腹減った〜〜〜〜っ。」
「お前、本当それしか言えねぇのかよ!?」
「腹減ったモンはしょうがねぇだろ!!!」
「この、脳味噌胃袋猿!」
「んだと〜〜!このエロ河童!!」
「何を〜、バカ猿!!!」
後部席で騒ぎ出した悟空と悟浄の声に、三蔵の眉間のシワが増えてくる。
いっこうに終わりそうにない、いつもの喧嘩に
これまたいつもの様に切れようとした時、急に悟空が黙り込んだ。
何かを探るようなそんな表情の悟空。
振り下ろそうとしたハリセンをその手にしたまま、三蔵は声をかけた。
「どうした。」
「・・・、臭うんだ。」
「はっ、どうせ食いモンの匂いってんだろ?」
「違う。・・・・・・、血の・・・・・・血の臭いがする。」
悟空の言葉にすかさず八戒が反応して、ジープのハンドルをきった。
悟空のナビで、森の中を走る。
近づくにつれて、悟空以外でも分かる程の妖気と血の臭いが辺りに漂っている。
八戒も、おのずとそちらの方にハンドルを切っていた。
木々の間を通り抜けると、そこは少し開けた土地があり、
そこには無数の妖怪の切り刻まれた死体が積み上げられていた。
むせ返る様な血臭の中、まだ何匹かの妖怪が生き残り一人の人物へと攻撃を仕掛けていた。
身長は悟空と同じか、それより少し高いくらいだろう。
漆黒の髪が剣を振るう度にサラリと流れる。
返り血を浴びる風でもなく、ただ、舞を舞うかの様に目の前の敵を切り裂いていく。
そんな彼に、一行は見入っていた。
最後の一匹を片付けた時、男の瞳がこちらを捕らえた。
剣に付いた血を、シュッと振り下ろすだけで綺麗に取り払いそれを消した。
悟空の如意棒や、悟浄の錫杖と同じ、だが発する気は人間のもので・・・。
これ以上かかわるのはゴメンだ、と言わんばかりに運転席の八戒を見た三蔵だったが、
ものの見事に悟空にくつがえされた。
ワクワクという表現が正しいのだろう。
金色の瞳を輝かせて、ジープから飛び降りていく悟空。
「すっげ〜な!お前、めっちゃ強ぇ〜〜〜!!!俺、悟空。孫悟空。お前は?」
妖怪を片付け終えた時、不意に視界に眩しいばかりの金色が入ってきた。
ジープに乗る四人組。
剣に付いた血を一振りして取り払い、それを消した。
「すっげ〜な!お前、めっちゃ強ぇ〜〜〜!!!俺、悟空。孫悟空。お前は?」
の元に黄金の瞳を輝かせて、駆け寄ってきた悟空を見て
それまで無表情だった顔に自然と笑みが戻った。
「僕は。」
「さんですか。初めまして、猪八戒です。」
「コレ全部お前が殺ったのか?やるね〜〜。」
「ああ、彼は沙悟浄です。」
翡翠の瞳の物腰柔らかそうな猪八戒。
深紅の髪と瞳が鮮やかで、ハッとさせられる沙悟浄。
そんな、悟浄の問いには肯定の頷きを返した。
「にしても、どうしてこんな所にいらっしゃるんです?」
「・・・、僕にも解らないんですよ。ただ、探し人をしてて。」
「こんな森ん中でか?」
「僕、『三蔵一行』を探してるんです。」
何気に言った言葉に呆気に取られる3人と、まだジープに乗っていて
明らかにウザイという気を発している金髪美人。
その雰囲気が何なのか・・・。
「僕・・・、何か変な事言いました?」
「・・・いえ。でも『三蔵一行』って、やっぱり・・・。」
「俺らしかいないんじゃねぇの?なあ、三蔵サマ。」
悟浄が呼びかけたその先には金髪美人。
有髪の、しかも金髪の三蔵法師だなんて想像もしていなく、次はが呆気に取られる番だった。
それを察してか、八戒が「彼が玄奘三蔵です。」と教えてくれた。
「オイ、貴様。何故俺達を探していた。」
それまで黙っていた三蔵が、低くドスのきいた声を上げた。
紫暗の瞳には、答え次第で容赦しないとアリアリと刻まれている。
それに戸惑い、苦笑する。
「何故・・・・・・って言われても。しいて言うなら、頼まれたから。」
「チッ、敵か!」
「待ってください、三蔵。さん、誰に頼まれたんですか?」
銃口をにむけた三蔵を制し、八戒が気になる部分をついてきた。
「誰って・・・。自愛と淫猥の象徴って感じの」
「まさか、観世音菩薩様ですか?」
「なんだ、知り合い?」
「ククッ、言ってくれるね、お前ら。」
言葉と共に光が溢れ出す。
そして、おさまった所には話の人物、観世音菩薩と次郎神が立っていた。
一度会ったことのある八戒と悟浄は然程驚きはしないが、三蔵と悟空はまじまじとその姿を見つめている。
「どういう事だ。これ以上厄介ごとはゴメンだ。下僕ならこいつ等だけでいい。」
「「下僕じゃない!!!」」
「あははは、言うと思いました。」
「・・・下僕なんですか?」
「「なわけねぇだろ!!」」
見事にハモル悟浄と悟空。
「おい、お前ら。コイツも一緒に連れて行け。」
「足手まといは必要ねぇ。」
「なんだ?見ただろ。コイツは強い、足手まといになんざならねぇよ。
それに、龍珠の守り人だ。牛魔王蘇生の阻止にも力になるハズだが?」
「・・・ですが、牛魔王サイドからも狙われやすいんですよね?」
「だろうな。」
「これ以上の厄介ごとはゴメンだ!!」
吐き捨てるように言う三蔵。纏っている雰囲気が殺気立っている。
が、どうもそのやり取りを面白がっているのが、観世音菩薩その人で。
「お前ら、コイツ一人守りきれる自信がねぇのか。」
「んだと?!」
売り言葉に買い言葉とは、まさにこの事だろう。
菩薩の言葉に敵意を向ける三蔵。
悟空と悟浄は面白そうに見守っているし、八戒も苦笑しながら見ている。
この言い合いを止めるべきなのではなかろうか?
「僕、自分の身は自分で守れますから。」
「の方がお前より強いかもな、金蝉?」
「チッ、コイツ一人ぐれぇなんとかなるっつてんだろ!」
「決まりだな。」
ニヤッと口角を上げる菩薩に対して、あきらかにしてやられたと苦虫を噛み潰し眉間にシワをよせる三蔵。
満足げな菩薩と目が合った。
その後ろでは次郎神が、おそらく胃薬だろう、薬を飲んでいた。
と視線を合わせたまま、菩薩は言い放った。
「コイツを同行させろ。菩薩の命だ、わかったな。」
「チッ、勝手にしやがれ。」
忌々しげにタバコを取り出し、それに火を付ける。
その表情はかなり悔しげである事がうかがい知れた。
ソレとは対称的に、面白そうに笑っている菩薩。
「やっぱり、楽しんでるだろ?」
「あん?当たり前だろ。せいぜい俺様を楽しませてくれよ。」
ヒラッと手を振って観世音菩薩と次郎神は、来た時同様光に包まれて消えてしまった。
「と言うわけで、これから宜しく。””って呼び捨てでいいから。」
「こちらこそ。僕も八戒と呼んでくださいね。」
「俺としては、美人なお姉様の方がよかったんだけどな。まあ、仲良くしようぜ?俺も悟浄でいいからよ。」
「俺も!!悟空って呼んでくれよな!それより、お前と戦ってみてぇ。」
ニコヤカに言う悟空に苦笑いをして、また今度ねと返した。
「三蔵サマも、よろしく。」
「フン。」
それがと三蔵たちとの出逢いだった。
NEXT
はい、遂に彼らは出逢いました。
そして、やっぱり俺様な観世音菩薩と三蔵サマ。
でも、菩薩のほうが一枚上手。。。ですね。(苦笑)
次は。。。何?あっ、町に着くんだっけ?(忘れてどうする)
・・・お待ち下さい。