全てが整った。

いざ、廻りだした運命の歯車を

もう、誰も止められない。



看とどけてやるよ

お前たちの生き様をな・・・・・・・。




――― destiny ――― act.03-1





菩薩と別れた後、は三蔵たちと共にジープに乗り近くの町へと到着した。

「八戒!腹減った〜〜。」
「はいはい。ですが、先に宿を取ってからです。もう暫く我慢してくださいね。」
「食い物の事しかねぇからな。この猿は。」

ジープを降りて、町中を歩く5人の男性。

無口無愛想の金髪美人。

人当たりのよさそうな笑顔を浮かべた翡翠の瞳の美丈夫。

紅く長い髪をかき上げ、タバコをふかすのがサマになっている深紅の瞳の美丈夫。

金色の大きな瞳をパチクリさせ元気よく走る少年。

漆黒の髪に蒼の瞳が印象的な少し華奢な少年。

一人でも目を引く存在が5人もそろえば、人々の視線はおのずとそこに集まるというもので・・・・・・。
それに気付いた悟浄は、あきらかに女性を物色しているようで・・・。
三蔵は、恐ろしいまでに殺気立っている。
は隣を歩いている八戒へ話しかけた。

「いつもこうなの?」
「いえ・・・。今日はいつも以上でしょうね。にもだいぶ視線集まってますよ?」
「う〜〜ん。困るんだよね。」
「ああ、彼女いるんですね。」
「ん〜〜〜、いないんだけど・・・。何て言うか、幼馴染?泣かせて残してきたから。」

彼女ではないが、麗がにとって一番近い女性だったから。
「笑って」とは言ったが、また泣いてはいないだろうか。

。お前、女泣かせちゃダメだろ?」
「・・・・・・。悟浄なんてしょっちゅう泣かせてそうだけど?」
「あははは、確かに。・・・でも。悟浄の言った事も案外本当ですよ。」

八戒の笑みでガックリ肩を落とした悟浄を、少し哀れに思いながらも麗の事を思い返してしまった。

「なあ、だったら早く帰ってやればいいんだって!な?そうだろ?」
「帰れないよ。・・・・・・だって僕、死んだんだ。だから、還る所無いんだ。」

いい事を思いついたとばかりに意気揚々と喋る悟空を、また叩き落とすには充分すぎる単語を発した。
その言葉に4人の足がピタリと止まった。
は数歩歩いた所でソレに気付き、彼らを振り返った。

「宿、行くんだろ?早く部屋取って、ご飯食べに行こうよ。お腹減ってるんだろ、悟空。」
「・・・・・・・・・・・・・・お、おう。」

立ち直りきれてはいないが、なんとか言葉を発し歩き出した悟空。
八戒も持ち前のポーカーフェイスを戻し「さて、行きますよ。」と歩き始めた。
悟浄もそれに続き、三蔵も一足遅れて歩き出した。
























宿を取り、食事をすべく近くの中華料理店へ入る。

「なあ・・・・・・。誰がこんなに食べるんだ?」

男5人のテーブルに、軽く10人前えはあろうかというぐらいの料理の数々。
八戒が言うには、まだ後で追加もあるという。
呆気にとられ固まったの前に、小皿に取り分けられた料理が置かれた。

「先に取っておかないと、無くなってしまいますから。」
「あ・・・・・・、ありがとう。」

そして、がゆっくりと食べている間に・・・。
昼間からビールをあおる三蔵と悟浄に、ゆっくりだが飲んでいる八戒。
これでもか!と食いまくる悟空。
それに負けることなく横から手をだす悟浄。

「あ〜〜〜〜!!!悟浄、俺の春巻き返せよ!」
「名前書いてねぇだろうが。バカ猿!」
「猿って言うな!それに、俺の小皿に取っといた分だろ!!!」
「知らねぇな。食ったモン勝ちだろ?」

言い合いがヒートアップしていく。

なんとも騒がしい食事だなあ。
まあ、悪くないかも。

そう思った矢先・・・・・・・・・。



ガウン! ガウン!


「静かに食えねぇのか!!!!!」
「「っぶねぇ〜な!!三蔵。」」
「るせぇ!!!黙って喰いやがれ!」


・・・・・・三蔵法師が銃か!?
なんでもありだな。
それに別段驚きもせず、止めもしない八戒。
まさか・・・。


「まさか、いつもこうなのか?」
「ええ。よく解りましたね。」
「マジかよ・・・。」
「ああ、そうそう。食事の後、買出しに行くんですが貴方の服がいるでしょう。一緒に行きましょうか。」
「あ、でも僕・・・。」
「大丈夫ですよ。三蔵がカード持ってますから。」

笑顔の八戒に「よろしく」と返し、また食事を再開した。


























―――その夜

今日の宿は個室が取れなく、二人部屋と三人部屋に別れていた。
二人部屋には、三蔵と悟空。
三人部屋には、八戒と悟浄、そしてが泊まっていた。

は夕食後シャワーを浴びて直ぐに寝入ってしまった。

おそらく旅の疲れが出たのでしょうね。
そこに見る寝顔は、まだまだあどけない子供の様で・・・。
顔にかかっているサラサラの前髪を、そっと梳いてやる。
中世的な顔立ちが、こうして見ると女性にも思えてくる。
買出しの時に聞いた話しでは、まだ18歳と言っていた。
悟空となんら変わりの無い年。


「八戒?」
「まだまだ子供なんですよね。」
「まだガキのクセに肩肘張ってよ・・・。」
「やはり悟浄もそう思いますか?」

タバコをふかす悟浄を振り返った。
スーッと紫煙が揺れ、空気に混ざっていく。

出逢った時から、そこまで自分を出していないと感じていた。
妖怪を殺している時も、その表情は無く。
どこか、強がっている風に感じられたから・・・。
あの時の言葉で、ハッとした。

悟浄の向かいのイスに座り、先程入れておいたコーヒーを口に含んだ。

「ま、出逢ったばっかだから、戸惑ってる部分もあるんじゃねぇ?」
「それもあるでしょうね。」
「でも・・・、あれだ。」

少し真剣な口調の悟浄に、八戒はコップをテーブルに置いて深紅の瞳を見つめた。

「居場所くらいにはなってやれるっしょ?俺たち。」
「ええ、そうですね。」
「ところでよ、」

悟浄が部屋のドアに視線を向ける。
部屋の前に立つ人の気配。
ソレが誰なのか。
聞こえてきた声に、八戒と悟浄は互いに顔を見合わせ苦笑する。
そういえば、あの人も気にしていた風だったと。

「じゃ、俺もそろそろ行くわ。」
「わかりました。でも、なるべく早く帰って来てくださいよ。」
「わ〜ってるって。」

ヒラヒラと手を振って夜の街にくりだす悟浄を見送ってから、八戒は隣の三蔵たちの部屋へ入った。
三蔵は自分のベットにドッカリと腰を下ろしてタバコをふかし、悟空はジープとじゃれて遊んでいた。
八戒は、とりあえずイスに座り、身体を三蔵の方に向けた。

の事でしょう?」
「ああ。何か聞いたか。」
「いいえ。夕食の後シャワーを浴びて直ぐ寝ちゃいましたから。」
「・・・・・、なあ。あれってどう言う意味なんだ?八戒。」

ジープをかまいながらも、悟空が口を挟む。
悟空も気になっていたのだろう。
昼間、自分が振った会話で嫌な事を思い出させてしまったのかもしれないと、彼なりに気遣っているのだろう。

「さあ、本人に聞いてみない事には・・・。実際、彼は生きてる訳ですから。」
「う・・・・・ん。」
「悟空、お前は気にしすぎるな。いずれ分かる。」
「・・・・・・。分かりました。聞いておきます。」

”いずれ”と三蔵は口にしたが、その紫暗の鋭い視線は「必ず今日明日中には聞き出せ」と物語っていた。

本当に気になっているクセに、自分で聞いてみてもいいじゃありませんか?

この最高僧にはそんな言葉通じないと解っていながらも、頭で考えてしまう。
八戒は、どのようにに問いただそうかと思案しながら部屋に戻った。
月明かりの中、眠るの顔が八戒をとらえた。

聞いたところでこちらの疑問は晴れるが、は・・・曇ってしまうのではないだろうか。

それとも、もう吹っ切れているのか。

強がりだけで話してくれるのか。

イロイロな事を考えてしまう。



「僕、死んだんだ。」



確かにはそう言った。

それが、どういう意味なのか・・・・・・。

―――悩みすぎるのも、よくありませんね。

頭を振り、考えを追い払って八戒も自分のベットに横になった。








NEXT

ようやく町に到着です。
長くなりそうなので、ひとまず。。。区切ります。
次は、の今の心境が明らかに!?
お待ち下さい。