嫌だといえば嘘になる。

といって、嬉しいというのも・・・・・・どうかと思う。

今まで隠してきた姿をさらけ出すのは

どうしてこんなに恥ずかしいのだろう。

でも・・・・・・・・・

やっと開放されるのだろうか。

偽りの己から―――






―― A falsehood and the truth ―― act.2







はベットに押し倒されながらも、今の状況になった事を必死で考えていた。





そもそも、昼間悟浄が僕を巻き込んでからだ。
三蔵の機嫌が悪くなって治らないのは・・・。
夕食時ですら、タバコの量とビールの量が普段の3倍増しになっていて。
まあ、その席に悟浄が居なかったのがせめてもの救いだった。
が、問題なのは今日の部屋割り。
二人部屋で、三蔵とが同じだったのだ。
八戒に言わせると、

「問題児二人を同室にすると保護者が必要ですからね。」

あからさまに黒い笑顔で言われたからには、引き下がるしか道は残されていない。
食事もそこそこに、三蔵が部屋に戻っていき、その後食事を終えた僕が戻って行ったんだよなぁ。
だったら、お風呂上りの三蔵がいて、僕もお風呂に入った。
そう、確か、そこまではよかったんだよ。
お風呂から上がったら、脱衣所に置いておいたサラシがなくなっていて・・・。
落ち着かないけど、そのまま服を着て、まだ濡れた髪をタオルで拭きながらドアを開けたら





・・・・・・・・そうだよ。





開けたら、拉致られたんだ。


ヒョイッとばかりに担ぎ上げられ、三蔵のベットに放り出された。
そして抵抗する間もなく腕を絡めとられ、三蔵の唇で抗議の声を上げようと開いた口を塞がれた。
最初こそ抗っていたが、いつの間にか力も抜けて涙がうっすら浮かぶ目で三蔵を見上げた。

「や・・・・・・ぁ・・・・・さんぞ・・・・・・」
「フン、てめぇは俺のモンだと言っただろおが。」

射抜かれる。
その紫暗の瞳に、体の芯まで捕らえられる。

「だから・・・・・あれは、気がついたら悟浄に抱きしめられていたんだから仕方ないよ。不可抗力だ。」
「知るか。」
「イヤ・・・知ってよ・・・ぁ」

いつも以上に抗議してくるの口を己で塞ぐ。
舌で唇を押し割って口内をなめまわし、逃げ惑う舌を絡めとった。


昼間、悟浄に抱きしめられ、あろう事かキスを迫られているを見てから俺の中の何かが変わった。


誰にも渡しやしねぇ。
触れていいのは俺だけだ。
もし、もし、可能なら、このまま部屋に閉じ込めてしまいたい。
誰の目にも触れさせたくない。
声を聞かせたくない。
その口で紡ぐのは、俺の名だけでいい。
求めてほしい。
それがダメなら、壊したい。


そんな狂気じみた考えが、俺の頭を支配する。
こんな感情を人は嫉妬とでも呼ぶのだろうか。
守る者なんていらない。
人を愛することなど必要ねぇ。
そうやって生きてきた。
そんな自分を変えたのはで・・・。
守りたい者が出来た。
不器用ながらも愛してやるよ。
誰にも渡しやしねぇ。
俺だけの――



己の身体の下で力をなくしていくから、ようやく唇を離した。
余韻を残すように繋がっていた銀糸がゆっくりと空間で切れた。
抵抗する力を失って三蔵を見上げる蒼の瞳が妖しく揺れている。

。」
「さ・・・ぞ」
「お前が俺のモンだって事を刻み付けてやるよ、その身体にな。」

絡めとっていた腕を放し、の身体に指を這わす。
服の上からでもわかるその豊かな双丘を鷲掴みにした。
いつもサラシで隠されているそれは、三蔵の手でも余るくらいで。
ゆっくりと揉んでやると、の口から艶かしい吐息が吐き出された。
とたん、恥ずかしがって顔を紅く染めたが、自由になった手を口にあてる。

俺に聞かせろ。
お前の声を・・・・・・・・・お前の全てを俺の前に曝け出せばいい。
もう隠すな。

「我慢するんじゃねぇ。聞かせろ。」
「・・・はずかしぃ」
「フン、なら我慢出来なくしてやるよ。」

服をたくし上げようとした俺の手を懸命に掴む
力で俺に勝てるはずがないのだが、そんな足掻きもまた可愛いと思ってしまう。

「待って・・・」
「なんだ。イヤだと言っても聞かんぞ。」
「・・・・・・恥ずかしいから・・・・・・・・・・その・・・・・・・・明かり・・・・・・・」

紅く染まった頬をさらに染めながら言うに、そこでやっと明かりが点いたままである事に気付いた。
仕方ねぇとばかりに、ベットから降りて明かりを消した。
窓からの眩しいばかりの月明かりに、ああ今日は満月かと笑みが零れる。
自然の光でも、はっきりと見て取れるの姿が俺の心を支配する。
欲望が渦巻く。
独占欲が湧き上がる。

再度に覆いかぶさり、耳元へ舌を這わす。
片手は服の中に滑り込ませ、直接胸を揉み解した。
柔らかくて、己の手に吸い付いてくるような感覚に、我慢が出来なくなってくる。
甘噛みしていた耳たぶから、ゆっくりと舌を滑らせ首筋に吸い付いた。

キツく
キツく

幾度も吸い付き、己の印を刻みつける。

月明かりに照らされている白い綿肌に、赤い赤い花が無数に咲き乱れた。
から吐き出される吐息が、いつの間にか艶っぽいものに変わってきていた。

「お前の全てを愛してやる。」
「三蔵……。」















宿の薄い壁越しに聞こえてくる艶声に、八戒と悟浄は互いの顔を見合わせた。
そして、一人夢の中の住人になっている悟空は、幸せそうに顔を歪めていた。
おそらく食べ物の夢でも見ているのだろう。

「はぁ〜。ったく、三蔵サマったら。」
「まあ、いいじゃありませんか。」
「そうか〜?女に興味なくて男だぜ?!」

病気だよ、病気!と言いながら、自身のベッドにどっかり腰を沈める。
そしてハイライトに火を点けた悟浄を、八戒は苦笑しながら眺めていた。
悟浄が一筋の紫煙を吐き出したのを見てから、口を開いた。

「ですが…、僕だってアブノーマルになるところでしたし?」
「ま、確かにな。俺もなら問題ねぇけどよ……。」
「そもそも、けしかけたのは昼間の貴方の行動ですよ。」

その事を思い出したのか、その後の事を思い出したのか、悟浄が遠い目をした。
あの後、悟浄は足腰たたなくなるくらいの事をされたのだ。
八戒に言うと、

「自業自得ですよ」

と笑われたが、その笑顔がやたらと黒かったから、悟浄はそれ以上何も言い返せなかった。

「別に愛なんて人それぞれですから……かまいませんけど。」
「ま〜な。あの三蔵様が色恋沙汰に目醒めたんだし?」

ふぅと溜息混じりの紫煙を吐き出した。
そんな悟浄に笑みを向け、八戒はコーヒーを入れる為に立ち上がった。
三蔵の相手がだと解っていても、この聞こえてくる甘く切ない喘ぎ声が八戒の脳内に響き渡って、正直おかしくなってしまいそうだ。
それは、おそらく悟浄とて同じ。
タバコの量がそれを物語っている。
ふと、コーヒーを入れている自分の手を見つめる。


この両手は………もう罪に汚れている。
誰かを愛せたとて、抱く事は出来ないかもしれない。
いいえ。
愛する事すら、できなさそうですね。
罪に汚れ、血に染まったこの手で、愛する者を抱く事など……。



「できんじゃねぇの?そのうち、さ。」

不意に両肩に重みがかかって、それが悟浄のものだと分かる。
自分の考えていた事を見透かされて、内心ドキッとした。
どうしてか、こういう事に関しては勘が鋭いんですよね…この人は。

「そうでしょうか。」
「そりゃ〜よぉ、あの三蔵ですらああなんだし?」
「……それもそうですね。」
「けっ。こんな事なら、昼間俺がヤッとくんだったぜ。」
「貴方もアブノーマル決定ですね。」

どうぞ、とコーヒーを差し出すと、肩の重みが消えていく。

「そーゆーお前はどうよ?」
「いや〜。あんな声聞かされたら……もう、堪りませんねぇ。」

互いに顔を見合わせて笑ってしまった。

「どうよ。このまま夜の街に…なんて。」
「貴方じゃあるまいし、僕は結構です。それに、貴方のように付き纏われても困りますしね。」
「あれはだなぁ〜〜〜。ま、もういいわ。」
「明日、出発できますかねぇ。」

コーヒーを一口飲みながら考える。
悟浄は紅い髪をかき上げながら、フッと自嘲気味に笑った。

「ま、無理っしょ。男でも女でも、初めての後は足腰立たねえっていうし?」
「ジープに揺られるのも辛いでしょうね。」
「ま、明日のは見物だな。」
「あんまり苛めちゃ可哀想ですよ?それに……三蔵に殺されますよ。」

初めて愛しい者を手にした三蔵なら、きっと今まで以上に独占欲を発揮するかもしれませんからねぇ……。
そんな事を考えて、二人の眠れない夜はふけていった。





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久しぶりの更新ですいません。
しかも、こんな!!!
ヤッちゃってますよ!?三蔵サマ。。。
ど、どうしよう。。。