ピンポーン♪
麗らかな日曜日の午後
突然、来客を告げるチャイムが鳴った。
は勉強の手を止めて、机の上の時計を見た。
午後も2時になろうかという時に、一体誰なんだろう。
約束はしてないから、学校の友達ではない。
あっ、もしかして宅配の人か。
ガサゴソとリビングのサイドテーブルの引き出しから印鑑を取り出し、玄関へと向かった。
「ちょっと待ってくださいね。」
ガチャっと鍵を回し、玄関のドアを開けると
「遅せぇ!!」
「さっ!!!さんぞっ!!」
まさか、まさか、三蔵が家に来るなんて思っても見なかった。
それに、そんな連絡聞いてない。
普段家ではとして過ごしている為、今の服はパステルピンクのタイトなシャツとオフホワイトのスカートなのだ。
思わず掴んでいたドアノブを慌てて引き戻そうとしたが、三蔵に阻止された。
「フン、お前家ではそうなのか?」
本気なのか、それともバレテしまったのか。。。
三蔵の無愛想な表情でそれはつかめない。
すっとぼけてみるか。
「いいだろ、別に。」
「おらっ!早く入れろ。目立つんだよ!!」
「何の用だよ。」
「るせぇ。入ってからだ。」
半ば強引に入ってきた三蔵に、溜息をつきながらスリッパを差し出した。
トップモデルを玄関で立ち話させる訳にもいかず、肩を落としながらリビングへ案内する。
「で?」
ドッカリとソファーに腰を下ろした三蔵が、タバコをくわえて短く一言発した。
ヤバイ・・・・・・。
マジにヤバイ・・・・・・。
紫暗の瞳が「言え!」と物語っている。
仕方ない・・・か。
「いや〜〜、なんていうか、ホラ。役作り?」
「そんな冗談聞いてねぇ。」
「うっ。え〜〜と、女装癖があるって言ったら信じる?」
「ほぅ?」
三蔵の横で立ち尽くしているの手を思い切り引っ張って、自分の方へ倒れさせた。
まだ火を付けていないタバコをテーブルの上に放り出し、ソファーの自分の身体の下へとを組み敷いた。
もし、コイツの言うとおり女装癖があるっていうのなら、それはそれ。
だが、あきらかに纏う雰囲気がのものではなく、女のとしてのモノで。
確かめてみてぇ。
ガラにもなく、そう思った。
俺の腕の中で、懸命に逃げ場を探しているが己の理性を崩させる。
コイツはそんな事気付いちゃいねぇだろうがな。
ニヤッと口角を上げて、まだ暴れているの唇をふさいだ。
啄ばむ様なキスから、ゆっくりと唇を押し開き口内へ侵入した。
口内を嘗め回し、逃げ惑うの舌を絡めとり吸い上げる。
の腕の力が弱まったところで、ようやく唇を開放した。
「お前が男かどうか確かめてやる。」
「あ・・・、ダメ!ダメ!!!」
「ほぅ。まだ抵抗するのか?」
「・・・・・・、ゴメン。さんぞ、僕・・・女だから。」
意地悪な問いかけに、の蒼の瞳は潤み真実の言葉が吐き出された。
三蔵の理性は脆く崩れかけていたが、無理に抱いて手に入れたとしても
の後ろに見え隠れする笑顔の黒い奴の事を思い出す。
を座らせ、少し乱れた服を直してから自分の膝の上に抱き上げた。
突然の事で先刻から涙が頬を伝っているのを口付けで拭い取る。
「悪ぃな。」
「えっ・・・。うん。でも、僕もゴメン。ウソついてたし・・・。」
「、俺のモンになれ。」
「・・・はい!!?」
「まあ、お前に拒否権なんざねぇがな。」
耳元で囁いてから、首筋へ唇を押し当てた。
離れた後には、の白い肌に紅い花が一つ咲いた。
それは、三蔵の・・・己の所有物の証。
「お前は俺のモンだ。」
はぁ・・・。
本日何度目かの溜息を吐き出す。
肩肘を突いて目だけを窓の外へ向ける。
はぁ・・・。
「何悩んでんだよ、。」
「解決できそうに無い問題。」
「何だよ、それ。」
「・・・にしても、あれだよな。お前、何か似てるよな。」
「おう。そんな悩んだ顔がよぉ。」
相変わらずの昼休み。
お弁当を食べ終えての雑談である。
の机の周りに、いつもの級友が4人集まって話しに花を咲かせているのだが・・・。
今日のの気持ちは晴れない。
昨日の三蔵との行為、言葉、すべてが頭の中から消えない。
あの後、悟浄から連絡を受けたという兄が慌てて帰ってきたのだが、もうバレタ後で・・・。
溜息をつきながらも、「三蔵ならば。」と言葉をつないだ兄。
どうやら悟浄には、まだまだ秘密にされるみたいで。
三蔵の事はキライじゃない。
むしろ、好きなほうだ。
でも、だからと言って、昨日のアレは無いだろ?
はぁ・・・。
「だから、に似てるよな。」
「はっ?!?」
馴染みのある呼び名に、一体こいつらは何の話をしているんだ?と顔を上げる。
「いや、お前って中世的な顔だしな。」
「そうそう。ロングのウィッグでも付けりゃ、バッチリいけるんじゃねぇ?」
「だからって、僕で遊ぶのはやめろ。」
「それもそうか。」
あはははと笑いながらも、彼らの雑誌をめくる手は止まらない。
そんな中、ケータイのメールの着信音が流れた。
がソレを開くと・・・。
「なに〜〜〜っ!!」
見た瞬間叫んでいた。しかも大声で。
教室内にいたクラスメイトは何事かと一斉にの方を見る。
が、当のはバッと窓から身を乗り出し、そこから見える校門を凝視した。
・・・確かにある。
あの見覚えのある深紅のフェラーリ。
「マジかよ。」
ガックリ肩を落として、カバンに手をかける。
「何!?誰からだよ、メール。」
「彼女か?」
「・・・・・・なわけないだろ。僕、急用できたから帰る。テキトーに言っといて。」
イスから立ち上がりかけたところで、窓際にいた友人が声を上げる。
彼の視線の先には、フェラーリとそれに寄り掛かるようにして立っている金糸の彼の姿が・・・、遠目でもわかるほどハッキリと。
「おい、あれって・・・。もしかして!?」
「マジ?!」
「なぁ、。お前まさか・・・。」
「ち・が・う!!他人の空似だろ。そもそも、そんな有名人がこんな所に来るわけ無いだろ?」
その言葉で顔を見合わせる4人。
「「「「それもそうか。」」」」
「って事で、後よろしく。」
「今度おごれよ。」
「O.K♪」
それ以上被害が拡大する前に・・・・・・と、は慌てて校門へ走った。
「だから!!!僕、学校なんだよ!?」
「ああ。」
「受験生なんだよ!!」
「学年首席だろ。問題ねぇ。」
「あるって!!!」
ああ・・・、どうして僕の彼はこうも唯我独尊で、自分中心なんだろう。
諦めに近い溜息を落としているを助手席にエスコートしてくれるあたり・・・・・・
やっぱり『俺のモノ』発言は生きているのだと納得してしまう。
ああ、それはもう諦めるから・・・・・・・。
どうか後1年弱の学園生活が無事に終わりますように。
特に自分と仲のいい、あの4人にだけは最後までバレませんように・・・・・・。
そんなの願いを乗せて、フェラーリは走り出した。
NEXT
遂に、バレてしまいました。
・・・、というか。何故三蔵はヒロインの家に来たのでしょう?
突っ込みどころ満載かもしれませんが・・・、流してください。