誰か・・・、助けてくれ。
この独占欲の強い恋人を、止めてくれ・・・。
――― 夏休みのアクシデント ―――
無事に、・・・いや担任にかなり説教されはしたが、八兄が面談をして事なきを得て夏休みに入った。
夏休みと言っても、今までと何ら変わりは無い。
学校に行くか行かないかで、やっている事は同じなのだから。
でも、モデルの撮影が午前中に入る事が多くなったな。
今日は仕事も無く、一日みっちりと仲良し4人組と図書館で勉強した。
その帰り道。
図書館から一番近いのがの家で、疲れた頭を休める為だと言って、彼らは家に転がり込んできた。
まあ、別にバレるような物も置いていないし、部屋にさえ入れなければ問題ないのだから・・・。
リビングで寛ぐ奴等にアイスコーヒーを差し出した。
「サンキュッ♪」
「・・・・っく、はあ!!!生き返った。」
「って兄貴と二人暮らしだよな?」
「?そうだけど、何?」
突然何を言い出すのかと思い眉を寄せる。
そんな事はお構いナシに、彼らはリビングを見渡した。
「いや〜〜、なんつうか、立派な家だな。なんてさ。」
「兄貴ってなかなかのやり手か?」
「・・・ああ、その事か。」
まあ、確かに自分の住んでいるこの家は、言ってみれば高級住宅街の中にあるわけで・・・。
その中でも、やはり立派な方に入る。
でも、家政婦は置いていない。
仕事柄スキャンダルを防ぐ為で、家の掃除はお互いに分担してしている。
もともとお互いそんなに散らかす性格ではない為に、いつもサッパリと片付いているのだ。
「確かに・・・、やり手だね。」
「だろうな。」
の言葉で皆納得顔でソファーに沈み込む。
「・・・って、おい。帰るんじゃないのかよ。」
「帰るけど、座り心地がいいモンで。」
「それに、まだ五時じゃん。大丈夫、大丈夫。」
「ああ・・・、兄貴に怒られるのか?」
一人が気付いて尋ねてくれるが・・・。
「いや、別に怒りはしないだろ。それより、僕夕食作んないと。」
「「「「ご馳走様です。」」」」
「・・・マジかよ!」
ガックリ肩を落とす。
こんなに大人数の食料なんて・・・・・・、ああカレーならいけるか。
「カレーでいいよな?」
「「「「おう!」」」」
「あんま、そこらの物触るなよ。兄貴怒るから。後、そうだな勉強でもしてろ。その間に作るから。」
悪い連中じゃないから、一度言ったら嫌がることはしない。
触るなと言えば触らない。
の言葉通り、カバンから参考書を取り出し勉強し始めた彼らを見てから、キッチンに入った。
玄関を開けて、まず目に入ったのが明らかに男物の靴が四足。
そういや駐車場の脇に自転車も止まっていたな。
三蔵の眉間に一気に皺が刻まれる。
「まあまあ。」
「んだ。友達って、男か?」
不機嫌全開の三蔵を宥める八戒に、悟浄が尋ねた。
「そうですよ。学校では男としているんですから。」
「ああ、なるほど。そうゆう事か。」
「ええ。ですから、三蔵。決して『』とは呼ばないで下さいね。」
「チッ。」
丁度打ち合わせが終わる頃、八戒のケータイにメールが入った。
夕食がカレーになった事と、友人も食べて帰ることが書かれてあった。
何処かに食べに行こうかと考えていた三蔵と悟浄が、の手料理が食べたいと言い出しそのまま八戒に付いて来たのだ。
「、帰りましたよ。」
八戒が声をかけながら、リビングのドアを開けた。
「あ、八兄。おかえり。」
「「「「お邪魔してます!!」」」」
カレーを運ぶ手を止め、揃いも揃って挨拶する友人たち。
確か以前学校に行った時に、の席の周りに居た方たちですね。
悪びれた様子も無く、しっかりとした礼儀を持っている事に安心して八戒は一歩リビングの中に入った。
その後ろから三蔵と悟浄が入ってくる。
途端、静まり返る室内。
「よぉ、。俺にも食わしてくんね?それ。」
静寂を破ったのは悟浄だった。
「八兄!!!」
「あははは。だって、ほら。外で食べるよりいいでしょう?」
「って、そうじゃなくて!!!」
・・・来るんなら、来るって先に言っといてよ。
三蔵、物凄く不機嫌だよ。
「あ・・・あの。玄奘さん、ですよね!!」
「カメラマンの沙悟浄さん!?」
「・・・すっげえ!!」
友人たちはそんな事知るはずも無く、目を輝かせている。
ああ、逃げれるのなら今すぐ逃げ出したい。
天を仰ぐに追い討ちを掛けるように、八兄が口を開いた。
「ああ、僕の事はあまり知られていないようですね。
三蔵とのマネージャーで、の兄の猪八戒です。」
兄よ、それ以上彼らを興奮させるような事を言わないで下さい。
意外な所からの名前が上がったので、友人たちは目をパチクリさせていた。
そして、思い出したかのように口を開いた。
「「「「玄奘さん、婚約おめでとう御座います。」」」」
「ああ。」
その事で、不機嫌だった三蔵の眉間から皺が少し減ったような気がした。
「さ・・・三蔵。ご飯用意するから座って?」
少しでも機嫌が直った今の内にと、三蔵をダイニングのテーブルの方へ促した。
悟浄もその後に続いて、席に着いた。
友人たちが帰った後、三蔵に拉致られた。
強引に腰に手を回され、担ぎ上げられる。
八戒が黒い笑顔で「襲わないでくださいよ。まだ、未成年ですから。」と言うのを鼻であしらう三蔵に・・・・・・・。
思い切り身の危険を感じた。
そんな事はお構いなしにの部屋に入ると、そのままベットにを組み敷いた。
俺と違う。
俺の知らない男と話している事が
一緒に居る事が、許せなかった。
学生だから仕方ない?
男として通っているから?
そんな事は知らねぇ。
俺だけに笑ってりゃいいんだよ。
苛立ちだけが募っていく。
早く俺だけのものにしてぇ。
ベットにを組み敷いて、半ば強引にその唇を奪う。
貪るように口付けてから唇を放し、その白く透き通るような首筋に吸い付いた。
「・・・あっ・・・・・・・・。」
小さな喘ぎ声が幾度と無く上がる。
その分だけ、その白に咲く紅い花。
「てめぇは俺のモンだ。俺だけに笑ってりゃいいんだよ。」
理性が崩れ落ちそうになる寸前で止め、荒い息をしたを抱きしめた。
誰にも渡せねぇ。
離れるなんて、許さねぇ。
力の限りで、繋ぎ止めたい心でおのずと腕に力が入っていた。
の苦しいと言う言葉に、ようやく力を入れ過ぎていた事に気付きその腕を離した。
が、先程とは逆にの細い腕が三蔵の首にスッと回される。
自分の下で見つめる蒼の瞳が、柔らかく微笑んでいた。
たったそれだけの事で、苛立ちがゆっくりと消えていく。
「ねぇ、三蔵。」
「何だ。」
「あいつ等はの友達。を見れて、抱きしめられるのは三蔵だけだから。」
「フン、当たり前だ。最後までバレるなよ。」
「うん。だから、怒らないで?」
可愛く首を傾げるに、今度は優しく口付けた。
ああ、確かにそうだ。
を見れるのは、限られた人物だけ。
を抱き、口付けられるのは俺だけ。
それだけの事実に気付きもしない俺が、ガキなだけか。
フン。
上等だ。
はやらねぇ。
の笑顔は俺だけのモンだ。
逃がしやしねぇよ。
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