クリスマスプレゼントに贈る物

それは自分の想い

自分の願い





X'masの天使





今日は通院日ということもあって、は家事をできるだけ早く済ませ病院へ来た。
いつもの時間にはまだまだ早い。
受け付けの人は驚いて、本当に最後でいいのか、と聞かれたほどだ。
は持って来た紙袋を傍らに置き、中から編みかけのセーターを取り出した。


少しでも形あるものを残していきたいから。
縛り付けたくないけど、思い出してもらいたいから。

イブまで、後三日。





「今日は顔色もいいですね。何かあったんですか?」


診察室へ入るなり、八戒先生にそう言われた。


「もうすぐクリスマスでしょ。」
「ああ。それでですか。」
「うん。三蔵に内緒でツリーまで買ったのよ。」
「驚きますよ、きっと。」


イブの日は早く帰ってきてくれるって、約束したから。
飾り付けをして、驚かせてあげよう、と只今計画中なのだ。


「言っちゃダメだよ、先生。」
「もちろん言いませんよ。」


唇にそっと人差し指をあてる八戒先生がお茶目で、クスッと笑ってしまった。


「そう言えば、最近体の方はどうですか?」


急に真顔に戻った八戒先生に、ウソや誤魔化しが通じるはずもなく・・・。
苦笑して、はぐらかした。


「三蔵に寝かせてもらってないんじゃないですか?」
「なっ!先生のバカっ。」
「冗談ですよ。でも睡眠はしっかりとって下さいね。」
「はい。」






























仕事が終わった三蔵は、懇意にしている宝石店へ足を運んでいた。
へのクリスマスプレゼントを買うために。
三蔵が店内に入ると、その姿を見つけたオーナーが奥から顔を出した。


「よお。珍しいじゃないか。お前がこの時期に来るなんざ。」


長い黒髪を後ろで結い上げ、紅いルージュを引いた口角が上がる。


「るせぇ。いつ来ようが俺の勝手だろ。」
「まあ、そんなに怒るなよ。で、プレゼントか?」


オーナーの観世音菩薩の言葉に舌打ちしながらも、そうだと答える。
宝石店など他に幾らでもあるが、自分の伯母の経営している店は、何より信用がおけるし、値は張るがいいものしか扱っていない。
嫌味を言われる覚悟で三蔵はココに来たのだ。

せっかくのへのクリスマスプレゼントだから。


「おいおい。マジかよ。で?」
「指輪だ。」
「ほぅ。誕生石か?それともアメジストか?」


菩薩の言葉で、自分がの誕生日を知らなかった事に改めて気付いた。
まぁ、三蔵自身も言ってないのだから、おのずと分かるだろう。

ずっと一緒にいるんだしな。

菩薩にアメジストの指輪を何点か出してもらい品定めをする。
その瞳がいつも以上に真剣なのを見逃すはずのない菩薩が口を開いた。


「お前がマジになる女か。今度ウチに連れて来いよ。」
「フン。誰が貴様に会わせるか。」
「なら、俺様が行ってやろうか。」
「来るんじゃねえ!クソババア!!」


三蔵の怒鳴り声が店内に響き渡った。
それをおもしろそうに、ノドを鳴らして笑う観世音菩薩。


それぞれの想いをのせて

夜はその色を変えていった。





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