X'masの天使
今日も昨日と同じように、天空から舞い落ちてくるのは純白の雪。
外は相変わらずの銀世界。
昨日の夜には降り止んで、道路に雪の名残が少しあるだけだったのに。
またか、と溜息を吐き出しながら三蔵は車を走らせた。
だが、心の中には淡い期待があった。
昨日と同じで、ノロノロと進む車の列。
公園の前を通るとき、視線を向けたがそこに彼女の姿はなかった。
もしかしたら居るかもしれないという期待が打ち砕かれて、三蔵は軽く舌打ちした。
もう一度会いたかった。
そして聞きたかった。
昨日の答えを。
昨日、何故声をかけなかったのか。
居なくなった後を追い掛けなかったのか。
今更後悔しても、昨日は戻ってこない。
いい知れぬ歯痒さに、タバコを車の灰皿にねじ込んだ。
マンションのベランダでは昨日と同じように空を見上げていた。
はらはらと舞い落ちる雪。
ベランダも純白の絨毯が敷き詰められている。
ふと昨日の男のことが頭を過った。
あんな通勤ラッシュの時間帯で、誰にも気付かれないと思っていたのに。
視線を感じて振り向いた先には眩しい金糸の髪が輝いていた。
そして紫暗の射るような瞳に、心臓が煩くなった。
――神様みたい
神々しいばかりの金糸の髪がまるで後光のようで、彼が視線をそらせた間に逃げ出していた。
話せばよかったかな。
後悔しても、もう遅い。
もう会えるわけないんだから。
あんな偶然が・・・
奇跡が起こらないかぎり。
溜息を吐き、は部屋に入った。
壁に掛けてあるカレンダーをそっと指でなぞる。
それには所々に赤い丸印がついていた。
ちょうど明日も赤く囲まれている。
「・・・イヤだな。何か言われそう。」
明日会う人の事を考え、自分の今の状態をどう誤魔化そうか考える。
嘘をついたところで、鋭い彼のことだからすぐにばれてしまうだろう。
肩を竦めてはベットに潜り込んだ。
誤魔化せないなら少しでもましな方がいい。
熱だけでも下がるかな?
昨日の雪の中、公園で立ち続けたせいで出てしまった熱。
後は少し咳が出るくらい。
身体は辛くても、不思議と後悔はなかった。
何故なら、神様に会えたから。
でも・・・。
もう一度会いたいな・・・。
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