どうにかして二人を逢わせてあげたい。

でも、八戒自身がかかわっている事を表に出したくはない。

二人が一瞬でも出会えたならば、おのずと何かが動きだすのだから。




X'masの天使





彼女を見てから10日が過ぎた。
あれから、あの時間には必ずあの公園の前を通るようにしているが、彼女の姿を一度も見ていない。


本当に天使だったってのか?


そんな思いが俺の頭を掠めていく。


もし天使だっていうなら、俺の願いを聞き届けてくれ。
神なんぞ信じちゃいねぇが、もう一度彼女に逢えるんなら信じてやるよ。





久しぶりに友人の八戒から連絡がきた。
日時指定の用件で、今日の昼に会うことになっていた。
まぁ、激多忙な外科部長様だから仕方ねぇって言えばそこまでだが。
よりによって自分が尋ねて行かなければならないなんざ、めんどくせぇ。
それに、行かなければあの黒い笑顔で後から何を言われるか。
俺様何様三蔵様の、自己中心的な彼だが、さすがの八戒にはある意味かなわない。



病院へと続く道の最後の信号に足止めされた三蔵は、吸っていたタバコを灰皿に押し込んだ。
その時、視界の端に微かに白いモノが映った。


はっと顔を上げて白を探す。

横断歩道を・・・、俺の車の前を歩いていく彼女がいた。


あの日と同じ白いコートと白い手袋。

歩くたびに流れ、揺れる漆黒の髪。

夢でも、幻でもなく・・・確かな現実。


三蔵は迷うことなく車を路肩へ停車させ、彼女の後を追い掛けた。






























「えっ?急用ですか。なら、仕方ありませんね。」

『ああ。』

「僕はかまいませんよ。また今度改めて。」

『次はお前が来いよ。』

「はいはい。」


クスッと策士的な笑みを浮かべてPHSを切った。
電話越しの三蔵は明らかに走っていた。
どうやら八戒の企みが成功した事を物語っていた。
ホッと胸を撫で下ろす。
今日はの通院日。
それに合わせて三蔵を呼び出したのだ。


来る途中で出会える事を願って。
気付かなければ、また次を考えるつもりだったんですが、心配しすぎでしたね。


出したままにしていたのカルテをファイルへと戻す。


今日診察した限りでは、風邪は治りかけていましたが、まだまだ油断は出来ないでしょうね。
最近は胸が焼け付くような熱さにも襲われると言ってましたし・・・。
長くはないでしょう。



「・・・皮肉なもんですね。」



僕ももっと前に逢いたかった。

そして真実を知った三蔵も、きっとそう思うだろう。

だって・・・。

運命なんて、時に残酷でしかないのでしょうか。

翡翠の瞳が哀しげに揺れた。





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