告げられた真実は

やはりと思っていたモノで

それでも、それが事実だなんて

今更・・・・・・と、思ってしまう。








――― blind angel ―――”lost truth” 







ピッ



MDコンポを操作して、部屋中に溢れていたピアノの音を消した。
それは、出逢ってからが自分に聞いてほしいと渡してきたものだった。



「紫鴛さんに・・・・・・何が見えるか、教えてほしくて。」





やはり、兄を待ち望んでいるのでしょうね。
それが、私―――ですか。








コンサートの次の日、母親を問いただして聞いたところ
「何故!?・・・貴方がそれを・・・・・・。」
と、本当に驚いた顔をしていた。
今まで23年間父親と思っていた男が、一瞬で他人に成り下がった瞬間だった。
それでも、それが何か?としか言いようの無い事で。
他人だと解っても、父は父親という枠にしかはまりませんしね。
フッと自嘲的な失笑を落として、窓を開けた。
フワッと生暖かい空気が部屋に流れ込んできた。





「ああ、そういえば。」







つい数分前まで聴いていた曲にシンクロした。







誰もいない ただ 暗い 暗い 闇の中を

ただひたすらに走り続ける。

その先には 一条の光

辿り着くと 大きな 大きな 扉の隙間から漏れているモノだと気付いた。

ゆっくりと重い扉を開くと そこは光の中だった。

そうですね・・・。

向日葵

といったところでしょうか。

眩しい太陽に照らされて輝く黄金の花たち

その中に 一つの麦藁帽子を見つけた。

カサカサと花を掻き分けて進んでいくと その中で 空を見上げている彼女がいた。

手には 手折られた黄金の花が その存在を主張している。

真っ白いワンピースを着た彼女を

抱きしめたいと思った。

この胸の中に しっかりと・・・。











私が?
それこそ世迷いごとのような気がしますが。
それでも、やはりそう思ってしまうのは彼女を一人の女性として見てしまったからでしょうか。
”義妹”なんですよ?











向日葵の中で、こちらを振り返った彼女の瞳には自分の姿が映っていた。
フワッと笑う彼女に、己の心を鷲掴みにされた感じがした。










私が告げなければ、決して明るみに出る事の無い真実。
告げるべきなのでしょうね。
でも、告げてしまえば・・・・・・。
彼女は一人の女性としてではなく、義妹として私に接してくるのでしょうね。
告げなければ・・・・・・。



ですが、そうなると。
彼女のたった一つの小さな願いは、いつまでも叶う事のない想いになってしまうのでしょうか。





「私は・・・、一体どうすればいいのでしょうか。」




彼女を、を欲しいと思っている自分と

彼女の願いを叶えてやりたいと思っている自分の狭間で

揺れ動くこの想いは、夏の風に吹かれた向日葵のように揺れていた。









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