やっと、やっと、見つかった。
たった一つの小さな願いが
今 星へと帰っていく。
――― blind angel ―――”hearty existence”
最近お前の事で悩んでいたからな。
後、寝不足もたたったのだろう。
俺はまだ仕事があるんでな。
明日、朝一で来る。
それまで、付いていてやってくれ。
紫鴛は、ベットで眠るを見つめていた。
外はもう夜の帳が下りていて、降っていた雨もいつの間にか上がっていた。
の額にかかった髪を一度梳いてやり、サイドテーブルに置いてある洗面器を手に部屋を出た。
温くなってしまった水を捨て、新しいものに入れ替え、またタオルを浸し、彼女の眠る部屋へと戻った。
静かに眠る。
それでも、吐く息はまだまだ荒い。
まだ、熱が下がっていないのですね。
絞ったタオルを額に置いて、その手をそのまま頬へと滑らせる。
ほんのりと熱をおびた頬が、堪らなく愛しい。
初めて逢った彼女は、義妹で。
初めて抱いた感情は、愛情で。
殺せるはずも無く・・・・・・、それでも、おそらくに聞かれてしまったのに
「よかった。」と言った彼女に、安堵を覚えた。
私は、貴女の傍にいてもいいのでしょうか?
愛し続けても、いいのでしょうか?
大切な存在となった貴女をそのまま残し、また以前の生活になど戻れるはずも無いのです。
だから、拒まないで下さい。
これからは、私が貴女の目になります。
―――。
長い間、待たせてしまいましたね。
温かい。
誰かの手が、自分の右手をしっかりと握りしめてくれている。
その温もりで目が覚めた。
子供の頃、風邪を引いて寝付けなかった時はよく母さんがこうしてくれてたなぁ。
・・・でも、今は?
隣に感じる空気・気配で焔じゃない事は分かった。
じゃあ、誰?
自問自答を繰り返す。
が、やはり答えは一つしか浮かばない。
ゆっくりと身体を動かし彼の方を向くが、何も反応が無いことに気付いた。
耳を澄ませば、聞こえてくるのは規則正しい呼吸の音。
寝てしまったのだろう。
そうなれば、余計に彼を起こさないように気を使いながら、身体を起こした。
額に置かれていた濡れタオルを、手探りでサイドテーブルに置く。
が、何かに指が触れ、カタンと微かな音が上がった。
それに反応するように、握られていた右手に力が入った。
「紫鴛さん、起こしちゃった?」
「・・・いいえ。すいません、私の方こそ。」
「ずっと、居てくれたんですよね?ありがとうございます。」
「かまいませんよ。それより、何か飲み物でも入れてきましょうか。」
そう言いながら立ち上がった紫鴛。
温もりの消えていく右手。
離れていく紫鴛の手を、は懸命に掴んだ。
「行かないで。・・・お願い、ココに居て。」
また、離れてしまうかもしれない。
そう思った。
消えてしまうんじゃないか。
焔との会話を聞いてしまったから、だから不安になった。
もう一人は嫌だと、心が孤独を、寂しさを拒絶する。
そんなの心を、気持ちを読んだかのように紫鴛を取り巻く気が動いた。
フッと和らいだような、そんな感じに。
そして、再び握られた手に温かさを取り戻した。
「何処へも・・・、もう貴女を置いて、何処へも行きませんよ。」
「紫鴛さん。」
「本当です。私は貴女の義兄なのですから。」
「でも、焔に・・・。」
「忘れて下さってかまいません。貴女にとっては、義兄なのですから。」
「そう・・・だけど・・・・・・。でも、私も好きなの。」
初めて会った時からずっと、心の中に入ってきて存在を大きくしていった紫鴛に、の心は傾いていた。
そして、焔と紫鴛の会話を聞いて紫鴛の気持ちを知った。
同時に、自分の気持ちも確信した。
義兄としてでは無く、一人の男性として好きなんだと。
だから、告げた。
「?」
「好きなの。私も、紫鴛さんと同じで殺せないから。だから・・・。」
全部言い終わらないうちに、全てを紫鴛に包み込まれた。
しっかりとその胸に抱きしめられる。
「いいのですか?」
「私こそ。ねえ、ずっと・・・」
「一緒に居ますよ。貴女は私にとって、大切な存在なのですから。」
そう、これからはずっと一緒です。
何があっても、この手を離しはしないですよ。
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