サンタクロースなんていないんだと、誰かが言った。
けど私は、いると信じていた。
だって私は、サンタクロースに会ったことがある―――
Little Santa 1
私がまだ幼い頃。
両親は喧嘩ばかりしていた。
クリスマスなんて、まして自分の子供へのプレゼントなんて考えてもなかっただろう。
そして私も、プレゼントを誰かがくれるなんて思ってなかった。
だってサンタクロースは、良い子のところにしか来ない。
両親はいつも私に、「お前がいるから別れられない」とか、「お前がいなければすぐ片付くのに。」と言っていた。
私は、自分がいるから両親が仲良くならないんだと思い込んでいた。
だから、悪い子の私の所に、サンタさんが来てくれるはずがない。
クリスマス・イブになっても、両親は喧嘩をしていた。
いつも通り夕飯は買ってきたもので、それが気に入らなかった父が母に文句を言って、すぐ喧嘩になった。
きっと友達の家では、テーブルの真ん中に大きなケーキとローストチキンが置いてあって、
ママの手作りの美味しそうな料理を囲んで、皆が笑っているのだろう。
そして明日起きると、小さな靴下の中に入りきらない大きなプレゼントが枕元にあって、
それを見て喜んでいる我が子にこう言うのだ。
『あなたがいい子にしていたから、サンタさんがプレゼントしてくれたのよ。』と。
私は哀しくて寂しくてどうしようもなくなって、雪の降る寒空のもとへ飛び出した。
それにさえ、喧嘩に夢中の両親は気づいていなかった。
走って走って、息の続く限り走った。
そして積もった雪に足を取られて転んだと同時に、堪えていた涙が溢れ出した。
周りには温かな光を灯す家が立ち並び、道路には自分以外誰一人いない。
手は悴んで、服は雪に濡れて、もう立ち上がることもできなくなっていたとき。
『おいチビ。』
目の前に、真っ赤なハイヒールが現れた。
泣いたまま顔を上げられないでいると、頭にぽんと手を置かれた。
頭に手を置かれるという動作は、私にとっては打たれることと認識されていて、思わずびくりと震えた。
けどその手は私を打たずに、頭に積もった雪を払ってくれた。
『こんなところにいたら風邪ひいちまうぞ。家に帰んな。』
黙っている私に、その人は更に続けた。
『お前がいなかったら、サンタさんがプレゼント持ってきたとき困るだろ?』
『・・・・・・もん』
『ん?』
『サンタさん、来ないもん・・・ は悪い子だからっ・・・サンタさん来てくれないもん・・・っ』
そう言うと、その人は手を止めた。
『ママとパパが喧嘩してるの、 のせいなの・・・ が悪い子だから、ママとパパ仲良くできないの・・・!』
声を出して泣き始めた私を、その人はぎゅっと抱きしめてくれた。
抱きしめてもらった覚えなんてほとんど無くて、私は思い切り抱きついた。
『大丈夫だ。お前は良い子だよ。』
『だってママとパパが悪い子だって・・・!』
『悪いのはお前じゃなくてママとパパだ。こんな可愛い娘放っておいてなぁ。寂しかったろ?』
何度も頷くと、その人はよしよしと頭を撫でてくれて、自分がしていたんだろう真っ白なマフラーを私に掛けてくれた。
『俺が約束してやる。お前のところには必ずサンタが来る。』
『でも・・・』
『いいか、今日はでっかい靴下用意して、早く寝ろ。そしたら絶対にサンタは来るから。』
『本当・・・?』
『俺は約束破らねぇよ。』
自信がありげな声でそう言われ、一つこくりと頷いた。
その人はもう一度頭を撫でて、『早く帰れよ。』と言い残して脇に止めた車に乗って行ってしまったのだった。
家に帰ると両親はまだ喧嘩していて、私はそうっと部屋に戻り、幼稚園のクリスマス会でもらった靴下をぶら下げておいた。
そして言われたとおり、いつもより早くベッドに入って目を閉じた。
本当にサンタさんは来てくれるのかと、不安と期待を抱えて――――
【next】
・・・私は相当菩薩っちゃんが好きなようです(笑)
今更ですが、現代設定なので宜しくお願いします。
『Melted Moon』の桜羅様よりフリー配布していたものを貰って帰ってきましたvvv
読んでいて、とても切なく、また、とても温かくなるそんな夢です。
もう大人の皆さんですが、本当にサンタさんを信じる心が持てますことを・・・。
子供の頃のドキドキだった気持ちを思い出して、夢に会いに行ってください。
桜羅様、本当に有難う御座いました。
蒼稜