Little Santa 2



真夜中。
何かが暴れているような音と、人の話し声のようなものが聞こえて、ふと目を覚ました。
自分には大きいベッドから身体を起こして、ヘッドランプをつける。
すると、寝る前に吊るしておいた大きな靴下が、わさわさと動いているのが見えた。
話し声もそこから聞こえるようで、恐る恐るベッドを降りて、靴下に近づいた。

そっと、そっと。

そして・・・

「なぁ!」
「きゃっ!」
靴下の中から、いきなり何かが飛び出してきて、驚いて尻餅をついてしまった。
いたた、とお尻を擦りながらもう一度靴下を見ると、そこには。

「あ、悪い驚かした?なぁ、こっから出してくんねぇ?こんなかすげー狭くてさー」

金色のぴかぴかの大きな目をした、小さなサンタクロースがいた。

私は驚きのあまり声が出なくて、でもなんだか大変そうだったから、いそいで靴下を取って床に置いた。
ぴょこん、とジャンプをして、さっきのサンタクロースが出てきた。
けどまだ靴下はもぞもぞ動いていて、何だろうと見ていると、更に3人もの小さなサンタクロースが出てきたのだ。
「よっ。」
「こんばんは、お邪魔します。」
「・・・・・・。」
ちゃんのおめめは大きくていいね、と幼稚園の先生に言われた目が、今にも零れ落ちてしまうのではないか。
と思うくらい目を丸くして見た。
紅い髪に紅い目のサンタクロースと、緑の目のメガネをかけたサンタクロースと、金色の髪に紫の目のサンタクロース。
そして、最初の金色の目のサンタクロース。
皆が三頭身で、大人の手ほどの大きさ。

「・・・サンタさん?」
「おうッ!俺サンタ9号、よろしくなッ!」
「僕は8号です。宜しくお願いします。」
「ホントは美人なオネエサンがよかったんだけどしゃーねぇか。俺は5号、ま、ヨロシク。」
「・・・3号だ。」
自己紹介をされたので、こちらも慌てて頭を下げた。
です!こんばんは!・・・あの、サンタさん?」
「何ですか?」
サンタ8号が、優しそうな笑みを浮かべて応える。
「・・・サンタさん、どうして今日来てくれたの?」
「え?」
「あのね、 にはいつもサンタさん来てくれなかったの。ママはね、 が悪い子だからだって言ってたの。
良い子にならなくちゃって思ったんだけどね、ママは昨日も悪い子だって言ってたから・・・」
とても不思議だった。
来てくれたことは嬉しかったけれど、来てくれる理由がわからなかったのだ。
悪い子だ悪い子だと言われて、今日急に良い子になったなんて信じられなかった。
すると、四人は苦笑するか気まずそうに視線をそらすかで。
「・・・ッごめん!」
いきなりサンタ9号に頭を下げられて、目を瞬かせた。
「どうしたの?」
「あのな、俺、俺っ、この家に来るの忘れてたんだ!」
「え・・・?」
どういうことだろうと、首をかしげた。
けれど9号はとても喋りづらそうにしていて、他の三人が苦笑しながら言葉を添えてくれた。
「あのですね、この町にプレゼントを配る担当は9号なんです。貴方が生まれたときは、ちゃんとプレゼントを持って来たんですよ。」
「ところがまぁこのバカがな、他の家のチキンやらケーキやらに気ィとられて、お前の所に来んの忘れたんだ。」
「・・・この家はクリスマスと言ってもろくなことはしねェし、親が喧嘩してるからな。」
「その・・・俺、ヒトが喧嘩してんのすっげェ嫌いなんだ。だからあんまりこの家に近づかなくてさ・・・」
だから、とサンタ8号が続けた。
「貴方が悪い子なんじゃないですよ。逆にこの辺りでは良い子の一等賞になってますから。」
「そーそ。悪いのはウチのバカ猿。」
「そういうことだ。」
「も、ホンットにごめん〜〜〜!!」
パン!と手を合わせて謝られる。

本当の話を聞いて、なんだかとても嬉しかった。
忘れられてしまったというのは少し哀しかったけれど、それは自分のせいじゃなくて。
プレゼントがどうのこうのというより、自分が悪い子じゃないと、良い子の一等賞になったという話が、とても嬉しかった。

謝り続けるサンタ9号をそっと手で包んで、その頬に小さく音を立ててキスをする。
目を丸くする9号に、にっこりと笑いかけた。
「あのね、 の幼稚園ではね、仲直りするときにこうやってあげるの!」
「え・・・」
「サンタさん、今日ちゃんと来てくれたから許してあげる!」
「・・・マジ?」
「うんっ!」
頷くと、サンタ9号はたちまち笑顔になって、「サンキュ!」と照れたように頬をかいた。

その下で他の三人が、
「・・・幼稚園でキスっていいのかオイ。」
「どうなんでしょうねぇ・・・」
「もちろん男だっていんだろ?」
「でしょう。」
「ってコトは初ちゅーはもう済み!?」
「・・・ちょっとムカツキますね。」
「下らねェ・・・」
という会話をしていたのは置いておく。

無事仲直りを果たした私とサンタ9号。
9号を床に降ろすと、他の三人もこちらを向いて、(3号を除き)笑った。
「あのな、そんで、今まで来なかった分、今日はトクベツサービスするからな!」
「え?」

パチン、と指を鳴らす音が聞こえた。
すると、部屋の明かりが全て消される。
そしてもう一度パチンと音がすると、そこは・・・
「・・・うわぁ・・・」
自分の部屋じゃないのではないかと思うほど綺麗に飾りつけられた部屋。
色とりどりのテープで囲まれた壁。
部屋の真ん中には天井に届きそうなほど高いクリスマスツリー。
「すごぉい・・・サンタさんすごい!」
、はいコレ。」
「え、なぁに?」
渡されたのは大きな金色の星。
「ツリーの一番てっぺんに付けるんだ。そしたらツリーの完成だぜ!」
「でも 、あんなに高くちゃ届かない・・・」
「・・・フン。」
サンタ3号が指をくるりと一回転させると、とたんに身体が軽くなった。
「きゃ・・・」
なんと、身体が浮いていたのだ。
ふわふわとゆっくり上昇して、ツリーのてっぺんまで来た。
、付けて!」
「う、うん!」
キラキラと輝く星を、ツリーの頭にそっと被せる。
すると、先程まではついていなかった華やかなライトが、ちかちかと光り始めた。
皆(3号除く)が拍手してくれるなか床に下りて、もう一度ツリーを見上げる。
幼稚園のツリーよりも、友達の家で見たどのツリーよりも綺麗だ。
「・・・すごい、きれぇ・・・サンタさん、ありがとう!」
「ははッ、まだまだこれからだぜ?」
「今夜は特別ですからね。」
「早く次に行け。」
「りょーかいッ!!」


その夜私は、今までで一番楽しい時間を過ごした。
サンタ8号の手作りのケーキ。
5号が持ってきてくれた温かい国の珍しい花。
9号は雪うさぎを作ってくれて、3号がその至らない部分を文句を言いながら修正する。
皆でトランプをしたときは、9号と5号が喧嘩をして、おろおろとしていると3号がハリセンで二人を叩いて、思わず笑ってしまった。
四人がトナカイの代わりに乗ってきた白い竜はとても可愛くて、そのふわふわの毛並みをずっと撫でていた。

それからどのくらい経ったのかはわからない。
そしていつその楽しい時間が終わったのかも覚えていない。
ただとても幸せで、温かい空気に囲まれながら、小さな私は眠りについた。





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 わかるとは思いますが、9号が悟空で3号が三蔵で8号が八戒で5号が悟浄です。